晴菜ミク

悲しみを思い出に変えて
女の子目線で繰り広げられるお話は、男の方が書かれたとは思えないほど繊細で、それがまず新鮮でした。

わたしも大事な人を亡くし、長い間泣き暮れた経験があるので、カノンの、“死んでしまった恋人との思い出をどうすればいいのか?”を図り兼ねるその気持ちがよく分かります。

時が経つにつれ、次第に薄れてゆく恋人との思い出。色あせる記憶。そんな自分が許せなくて、記憶を消す装置を持っているという老紳士に頼ろうとしたカノン。

でも、恋人と2人で花火を見上げたその場所で、彼が死んだという悲しい事実をもう一度深く思い返し、その現実ををしっかりと受け止めた時、カノンはひとつの壁を乗り越え、彼を思い出にして歩き出す決心をするのです。

過去を振り返ること。過去を忘れること。そのすべてを良しとして、前向きに生きることの大切さを教えてくれる作品です。