琴宮棄聞

けしからん!
前々作、前作と続けて読んで来たが、本作はソリッド・シチュエーション・ホラーとでもいうべきか?
下地に『痴漢冤罪』などの社会性テーマを置きつつ、オカルティックな要素を排除してもミステリーとして充分に楽しめる。
全く面識も繋がりもないように思える人々がある密室に集められるのだが、彼らは或る一家を崩壊に導いていった事に関与しているという事が徐々に判明していく辺り、なかなか感心させられる。
しかも前作のラストシーンが本作の中盤で出て来て、三作品が繋がっている。さらに前々作で、駅前のオーロラヴィジョンに映し出された移行期墜落事故の映像を見て立ち止まってしまった亮輔の背中にぶつかってくる青年って本作の山口孝治では?
あちらこちらに伏線を撒いていて、それが思わぬところで改修されてくる技も絶妙だ。
お陰で一気に読んでしまって、寝不足だ。
人の睡眠時間を削ってしまうほど魅了的とは、全くもって『けしからん』作品だ。
そういう訳で★五つ。
本格派と言ってもいいのではないかと思う。