「理子。」






ゆっくりと私の名前を呼んだかと思えば

同時にその綺麗な顔を歪めた。

悲しみ、いや…哀しみを含んだ目には、

私の姿が揺れている。





「…頼むからもうやめてくれ。」




消え入りそうな声で呟くこの男。


見た目とは似ても似つかない位のか弱い声色。

きっとこの男を知っている人達が見たら

あまりの違いさに驚いて開いた口が塞がらなくなるんじゃないだろうか、

…なんて考える私は相当この雰囲気の悪さを感じれない、ただの空気が読めない女なのかもしれない。





「雅春には関係ない。」



そう答える私を見据えた男の目には、

先程よりより一層増した

…酷く哀しみの色に染まる目。





そしてまた綺麗な唇を開いて言った。








「…やっぱりお前はどこまでも酷い女だよ、理子。」