小泉秋歩

Beer and Popcorn.
スタンリーとケビン。旧友同士。
ハイスクールを卒業後、ケビンは出版社に勤めて4年目。対してスタンリーは転職歴9回、また会社を辞めてきたところ。
そんな2人が久しぶりに会って、スタンリーの部屋でビールを片手にだらだら喋り続ける。
まずいチリソース味のポップコーンを食べながら――

全編が2人の台詞のみ、という異色作です。
いい意味で「しょーもない」2人の独身男の会話が非常に面白い。
会話の途中で「そういえば●●で思い出したんだけどさぁ…」と、突拍子もなく話題が変わってしまうのが実にリアル。
ポップコーンの袋を開けるのに人間のプライドをかけたりするバカバカしさもイイです。
完全なる室内劇ですが、2人の口から語られる他のキャラクターの様子もなんとなく浮かび上がってきます。
しかも、情景描写がひとつもないというのに、部屋の様子やテレビの映像まで見えてくるような気がします。
相当な筆力ゆえの余裕すら感じさせます。

今宵、ビールとポップコーン又はカシューナッツ――ただし腐っていないことをよく確認して――を片手に、彼らの終わらない話に耳を傾けてみては?