それは、特別空が青い夏の日のことだった。
「そら、私と付き合ってくれない?」
目の前に立つ少女が、座り込んでいる私にそう告げる。微かな興奮を隠せていないその声は、やけに自信に満ちていた。まるでその訳のわからない申し出を私が断ることなんて、微塵も考えていないみたいに。
軽く乱れた、肩より長い黒髪。紺色のブレザー。チェックの入ったスカート。おそらく高校生であるはずの彼女は、私の知り合いなどではない。名前は確か「すみれ」。彼女について私が唯一知っているその情報も、たった数秒前に得たものだ。そもそも出会ったのも数分前だというのに、彼女は何を言っているのか。何故嬉しそうにしているのか。私には何もかもわからない。なんで、どうして、こうなった。私はただ写真を撮っていただけなのに――。
写真撮影が趣味の大学生、柊そら。厳格な親の元で育った優等生、桐ヶ谷すみれ。
出会うはずのなかった二人が繰り広げるガール・ミーツ・ガール。