商家の生まれである「エマ = ウィルバーフォース」は、長い黒髪、漆黒(オニキス)の瞳に豊かな胸と非常に美しい娘なのだが、年頃だというのに「どうすれば強くなれるのでしょうか」といった話ばかりな上、剣の腕前も足技も相当なもの。さらに180cm近い長身ともなれば、いかに見た目がよかろうと、縁談の話など舞い込んでも来なくなる。だがそれは、「グーベルク国で女騎士になる」という夢を持つエマには好都合であった。
そんなエマが騎士になるべくひとり向かったグーベルク国には、金の髪、子猫の青(キトゥンブルー)の瞳の、天使と見まごうばかりの愛らしい容姿を持つ騎士団長、「アシュリー = オルブライト」がいた。
160cm程度と小柄だが、剣の腕前は確かであり、軽やかな性格と口調もあって国民から大人気――なのだが。彼も国王陛下直々に「伴侶を選びなってば!」とせっつかれては、「やだ!」と断固拒否する日々を送っていた。
当然、出会うべくして出会ったふたりだが、エマにとって彼の最初の印象は「言動のおかしな小動物」であり。アシュリーにとってのエマは、「強い人って素敵、抱いて!」と、かなり対象的。
それもあってエマは絶賛塩対応をしていたが、アシュリーの人柄や剣の腕前、城下町を騒がすある出来事をきっかけに、対応は変わっていき――。