人魚姫症候群――いつしか世界には、そんな病が蔓延していた。「一番大切な人のことだけ忘れてしまう」大切に思えば思うほど、心を込めれば込めるほどに、記憶は泡のように儚く消えてしまうのか。
「僕はきっと、君を忘れ去っていくのだろう」
「君を忘れない。ただそれだけの約束も守れないなんて」
それでも記憶は、何度でも胸の奥で息を吹き返すだろう。