田辺凪は、陸上部に所属する高校2年生。部活の練習はただでさえハードなのに、凪はテスト前のオフ期間にも自主練を欠かさなかった。そんなある日、彼女の自主練に付き合っていたマネージャーの清水優香が彼女に尋ねる。
「凪ってさ、何でそんなに頑張ってるの?」
彼女はかねてから疑問に思っていた。入部当初はそれほど熱心でも、逆に不真面目でもなかった凪が、何故ここまで練習に打ち込んでいるのか。何が彼女を駆り立てているのか。
優香の問いかけに、凪が答える。
「憧れの人がいるんだ」
「憧れ?」
首を傾げる優香。
「うん。私はその人と走りたい。その人に私のことを見てもらいたい。そのためには、もっと速くならないといけないの」
やがてテストが終わり、部活が再開し、夏の大会がやってくる。
憧れの「彼女」への想いを胸に努力を重ねる凪。
凪の隣で彼女を支える優香。
そして、憧れの「彼女」。
号砲の先に、彼女たちは何処にたどり着くのか。
たった数秒のレース。他人より速いか、遅いか。刹那の勝負に彼女たちはすべてをかける――。
【Palette No.1】