この世とあの世の境には大きな川があると言われている。その畔に佇む瀟洒な館の主は、『忘却の女神』と呼ばれている存在。あの世からこの世へ再生する前に、人々に『忘却の薬湯』を飲ませて、記憶を消す役割を担っていた。
そんな彼女の館には、たくさんの風鈴が飾られている。それは、彼女が道楽で集めた記憶たち。
死後の世界で無理やり忘れさせている記憶では無くて、今この世で生きている人々の記憶を引き取って、風鈴に刻んで飾っているのだった。
それらの記憶は、この世を生きる人々が、悲しくて苦しくて捨てたいと思っている記憶。
その記憶を捨てることで、彼らの運命が変わるのか変わらないのか。
彼らが引き起こす『罪』が減るのか。
そんなことを試していたのだ。それもこれも、愛しい閻魔の悩みを和らげてあげたいと言う恋心からだった。閻魔は己の役割について憂いていた。
館を訪れた閻魔に、健太郎と美和子という二人の記憶を見せる。
彼らの恋の顛末を追いながら、閻魔と忘却の女神である清果は、互いの本音を語り合うのだった。
全九話。二万字程度。性描写は保険程度の描写しかありません。
忘却の女神……真名は清果(きよか) この世の記憶を貰い受けに行く時には、『惟楽 緒希《いらく おき》』という偽名を名乗っている。
閻魔……真名は夢幻(むげん) 地獄の入り口で人々の罪を裁いている。己の仕事を苦しく思っている。
深瀬健太郎(ふかせけんたろう)……この世の人間で、失恋の痛手を引きずっていた。清果が惟楽名義で募集している『捨てたい記憶の引き受け』を依頼した。
光本美和子(こうもとみわこ)……この世の人間で事情があって健太郎をふるも、後悔している。同じく『捨てたい記憶の引き受け』を清果に依頼する。
恋愛
- #純愛
- #2023秋の小説合宿
- #あやかし
- #閻魔
- #孟婆