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坂本楡佳

さかもとゆか

小説・コミックシナリオ大賞の最終選考ノミネートに残りました

初めまして、坂本楡佳です。
先日発表された、小説・コミックシナリオの最終選考ノミネート作品に、ありがたいことに拙作が選ばれていました。嬉しかったので、記念に記事を投稿してみます。

* * *

選ばれたのは以下の作品です。

『調教師と万年筆』
https://maho.jp/works/15591074771453420896

あまりに自分の性癖が強すぎたためリンク付けはしませんでしたが、元々よそで小説として書いていたものをコミックシナリオ用に直したものになります。また、この賞に応募するためだけにアカウントを作成した次第です。
選考現場レポートが公式編集部さんから出されており、それによると、私のように応募のために新規登録したユーザーは応募者のうちで六、七割ほどいるそうです。賞金もそれなりのものと思われますし、話題になったためでしょうか。私自身も、自分でこの賞の存在を知ったわけではなく、たまたま私の作品を知っている方からの紹介で知りました。
私は去年までは学生で、余った時間を費やして一年に八十万字も書いていましたが、今年から社会人になってしまい、そんな長編を書く余裕がなくなってしまっていました。ネタを考える頭はあっても手を動かす時間がなく、持て余していました。そんな私にとって、今回のコミックシナリオ賞の枠はとてもありがたかったです。
それから、私が応募するきっかけを作ってくれた彼女には、感謝してもしきれません。昨晩は選考結果をLINEで伝え、それから彼女の好きなカフェラテと祝いのスイーツを買って早速貢がせていただきました。

話を戻します。
この作品は、元々は一話につき五万字ほどのペースの全九話(+後日談一話分)で小説に書き起こしていました。(結局未完成のまま社会人になってしまい、第五話まで書いたところで手をつける時間がなくなってしまいましたが)
今回の応募要項の既定の文字数になるように、様々な要素を削りました。例えば、本当は登場人物は他に六名いました。彼らも一人ずつ魅力的なキャラクターだったのを、シンプルなモブに落としたり。調教シーンはどのアダルトグッズを使ったかも明記していましたし、屋外プレイや3Pなどの特殊プレイも色々と盛り込んでいました。が、あまりに本筋と関係ないただの私が好きなえっちだったので、それらも削っています。あとは、歓楽街一番の有名で美味しい焼肉屋に行くシーンや、女性キャラだけを集めて夜な夜な女子会をするシーンなんかも、泣く泣く削ってしまっています。
ただそれでも、大筋だけは変わっていません。私の中ではもう決めたハッピーエンドがあり、そのための伏線だけは残してあります。
そのせいでコンパクトに収めることができず、応募作品では最終話まで書くことができませんでした。もしそれが最終選考敗退の要因となってしまったら…と考えると少し怖かったりもします。
私がこの作品を生み出すことができたきっかけも、手伝ってくれたのも、賞のことを教えてくれたのも、全て彼女です。彼女のためにも、いけるところまでいってみたいなと、欲張る気持ちが少しずつ芽生えています…。
まあ今からできることはないんですけど!

* * *

今回の応募作品で、もしコミカライズした際に一番漫画で美しいシーンにしてほしいのは、【今後の展開】でも書いた、二人の静かな会話シーンです。
梅はちょうど接客研修から帰ってきたばかりで、自分がこの先どうなるのかを真剣に考え始めた時期です。
もしルークが自分と添い遂げてくれる気があるなら、彼女もきちんとこの状況を脱するための覚悟をする気持ちはありました。
またルークは、もうすぐ訪れる風営法規制強化の日を受け、その混乱に乗じて調教師の仕事をやめること、また梅を普通の生活へ戻してやることができるのではないかと考え始めています。

そのため、二人きりの静かな夜、穏やかな添い寝の中、ルークは梅に問います。

「ここを出た後、なんだかんだでお前が自由になれたとしたら、なんの仕事がしたい?」

これはルークが、彼女の将来の夢をさりげなく探るための発言です。
梅にしてみれば、自分はM嬢になる未来以外はないとルークに教えられてきたようなものなので、こんな質問が来るとは思ってもいなかったでしょう。

「……考えたことなかった。仕事……でも、仕事といってもよくわからないから…。…それよりまず、勉強したい。大学でもいい、専門的なの。それで…本出す、手伝いできればいい、かな」

梅が考えながら紡いだ答えは、大学生になって出版社に勤めるというものでした。誰の本を出すのを手伝いたいかを明言しなかったのは、気恥ずかしかったためです。大好きな作者とはいえ張本人に直接伝えられるほど素直な性格はしていません。
ルークは「いい夢だ」と微笑みますが、梅にしてみれば叶うはずのない夢ですから、語るだけ辛いものです。

ルークの話が終わると、今度は梅の番です。
梅は何も言わないまま、上半身を起こしてルークを見つめます。不思議そうにしながらも同じように身を起こそうとしたルークの動きを遮り、梅からキスを送って、目を細めます。

「私が、あんたに処女をもらってほしい、て言ったら。どうする?」

それまで受け身の少女でしかなかった梅が、初めて素面のまま自主的に動き、一人の女になった瞬間とも呼べます。
その問いかけはルークにとって想定外のものでした。元々梅を引き取るきっかけになった、風俗店との契約では、引き渡す嬢は必ず処女でなければなりません。現に梅は毎晩体を開かれているにもかかわらず、一度もそこに男を受け入れたことはありませんでした。調教師たるルークが、絶対に破らず守っている掟の一つです。
それを破ってくれという願いは、梅自身の気持ちを伝える行為でもあり、同時にルークを調教師として失格させるものでもありました。

ルークがもしただの男だったなら、ここで迷わず肯定を返していたはずです。
ただし彼はその恐ろしい歓楽街の住民であり、契約違反による制裁と法外で桁違いな違約金への対応をする手段をまだ持っていませんでした。そのため即答することができず、ただ驚いて瞬きを繰り返すばかりです。
少しだけ答えを静かに待っていた梅は、その沈黙を受け取り、覚えた悲しみを胸に仕舞い込みながら、「返事はいらない」と布団に潜ります。その心中を察したルークに背中から抱きしめられても、梅は何も言わず唇を噛み締めるばかりでした。

そこでルークは、一つだけ、今回答できる手段を思いつき、梅をシーツで包んで抱え上げます。
不思議そうにする梅を姫抱きしたまま、ルークが連れて行ったのは真っ暗なリビングです。普段は夜はカーテンを締め切っていますが、その大きな窓から外が見えるように、ルークがカーテンを開きました。
そこから見える景色は、歓楽街が最も明るく賑やかになる時間帯の、美しい夜景です。その広い街には有象無象の人間がおり、それぞれの活動によって毎日輝いているのです。

「…方法が全くないわけじゃない。これだけ広い街だ、人間が一人や二人消えたところで、変わらず毎日輝いているだろう。だから、名前も立場も全部捨てて、どこか遠いところへ二人行ってしまうか?」

これが、このときその調教師が用意できた、精一杯の答えでした。
美しい夜景を見ながら、梅はルークの肩に頭を置いて、少し考えます。

梅とルークが二人で駆け落ちすれば、確かに制裁や違約金から逃げることができるかもしれません。
それでも、梅はここで既に素敵な友人を見つけてしまいましたし、ルークがせっかく続けていた副業も捨てさせてしまうことになります。ルークの本が何よりも愛しい梅にとって、それだけは許せませんでした。
梅が首を振ると、ルークは少しふざけるように、「フラれてしまった」と笑いました。

この夜を境に、梅は自分がルークの最高傑作として世に出る覚悟を決めます。それ以上の幸福を求めるのをやめ、ただ美しい夜の華として、その街の女王になる覚悟です。
一方でルークは梅の本当の願いと欲しい将来を知り、本格的に梅を嬢にしない手段を練り始めます。違約金には、最近出版したばかりでとても売れ行きの良い本の印税を。制裁から逃げるためには、ルークの恩人である情報屋のすみれの手を借りて。持ちうる全てを費やして、普通の幸せを彼女に贈ろうとします。

だからこそ、翌朝に梅が、ただ感情を持たず美しく嬢の笑顔を浮かべるようになったことを知った時、ルークは悲しみを覚えるのです。

* * *

こんな感じのシーンが七話に入る予定です。(本当に入りきるのか…?)
漫画にしたら何ページになるのか検討もつきません。つきませんが、夜景を二人で見るシーンは、絶対エモの塊になると思っています。二人の伝えきれない愛情と切ない精一杯が詰まっていて、読者の心をぶん殴るのに最高の一ページになるはずです。
見てえよ〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!
頼む何かしらの形でこのページだけでも作ってくれ〜〜〜〜〜〜〜!!

以上です。
ありがとうございました。

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