ある雪のちらつく晩、アリサ教会の大聖堂に男二人と少女がいた。
聖なる魔力と相反する『死』の力を持つパルマは、イロモノ神護師として教会の神父に変態貴族へと売られかけていたのである。
この国では彼女のように『闇の魔力』を身に宿すものは異教徒として殺処分を受けなければならない。このまま変態貴族に売られても、玩具のように弄ばれるだけ。
――私はこの世界に居てはいけない存在。どちらにせよ殺されるのなら、この場で自分の命を絶っても良いかもしれない。
辱めを受ける前にすべての決着を付けようとしたパルマ。その直前、彼女の前に一人の若い銀髪碧眼の騎士が現れる。
「キミの身柄は俺が貰い受ける」
ニーヴェルと名乗った彼は、神父や変態貴族から無理矢理パルマを奪っていく。彼はなんと侯爵家の当主であり、氷雪騎士団と呼ばれる、国王陛下が邪教徒狩りを直々に任命した特殊部隊の隊長だったのだ。
本来であればニーヴェルはパルマを処刑しなければならない。
だが彼は彼女を自身の目的――6年前に起きた両親を死に追いやった吸血鬼事件、その犯人を追う手掛かりだと言う。
そして彼女が孤児となったキッカケは、ニーヴェルがパルマの記憶を封印したからだとも。
仕方なく彼ら氷雪騎士団の一員として過ごすことになったパルマだったが、王都にて第二の吸血鬼事件が起きてしまう。
再び多くの被害者が生まれてしまう――そう思われたが、それを救ったのは意外にも『闇の魔力』を持つパルマだった。
彼女の実力が周囲に認められ、己でも知らなかった『自分の価値』というものに戸惑うパルマ。
パルマを利用するだけのつもりだったニーヴェルも、彼女の献身的な振る舞いに心境の変化が起きていく。
――俺の初恋も、彼女の記憶と共に封印したはずだったのに。
図らずとも己の恋心が再燃し、パルマを道具として思えなくなってしまったニーヴェルは無自覚にも彼女を溺愛していく。
パルマも彼の優しさに触れ、少しずつ自分の力を受け入れていく。失ってしまった過去や呪われた力も、これからの未来のために――そして何よりも自分を救ってくれた、ニーヴェルのために。
同時に第二の吸血鬼事件で6年前に起きた悲劇やパルマの秘密、そしてニーヴェル自身の重大な過去が明らかになっていく。
表紙イラスト/ノーコピライトガール様より
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