灰色の空にはカラスが合う
失恋のショックも未だ覚めやらぬ一昨日
街を歩いていると、電線に一匹の烏がいた
一匹は一寸珍しいな、迷子だろうか?と
思ったがそうでは無いらしい
その子は何も無い空間にひたすら鳴いていたのだ
そんな烏が迷子なわけはない、しかし親でもない
しばらく眺めていると
何に鳴いているかわかった
春風だ、強い春風に鳴いていたのだ
全て吹き飛ばすような
涙も病原菌も種も混ざった混沌の春風を
重い雲を動かしやがて雷を降らせるような春風を
たった一匹で
ああ、この子は正に闇夜を纏った烏ではないか
私はそう賛美を贈らずにいられなかった
やがて、風が弱くなるとその一瞬に
翼を広げて、空へ消えていった
灰色の
黒の絵の具を使った後に洗うのを怠って
白を使ったような空は
烏が合う
なぜなら互いに孤独だからである
シェア
コメント
ログインするとコメントが投稿できます
まだコメントがありません