友達がユニコーン解体業をしているらしい。仕事の内容は運ばれてきたユニコーンの遺体を臓器と血に分けるだけ。ユニコーンは真っ黒な布で覆われており、本当の姿は誰も知らないそうだ。血の色を聞いてみたら苦笑いをして「お前が想像する夜の色だよ」と言った
以下は友人の話を元に作った歌である
朝に出た月と今日一日がんばらない
約束をしてしまうのだ
布越しにそっと触れれば
買いたての冷蔵庫開く様な冷たさ
根元からツノ折られており
これはたぶん「やさしいこ」だろう
これはサナ これはパドル これはタイミナ
夢の中の臓器にきちんと名あり
弁当昼生姜焼きの肉さえも
君たちと思い噛めば ゆるやかに甘し
「コーラではないからね」と瓶手に
けらけらと笑う 歳上のじじい
|黯《くら》き血に星々は瞬かぬ事実が
この胸をいぢめてやがる
薄い壁隔て一日中坊主が
ユニコーンに意味もない説法をす
「たくさん殺すぞ」と記せし手帳を
川面に叩きつけた帰路 満月
虹のにおい こびりつく日給で
鮮やかな金平糖 一つかみ買う
夢がない大人と思わんでくれ
夢を崩しているだけだから
なぜ生きる夢がある夢が死ぬ
ユニコーンは死ぬこの世いっぱいのなぜ
空にただ祈らむ友の
頼りなき背に 透明なつばさ下さい