【1】ラスト
『ラスト』
君にもらった手紙を読み返す。
くしゃくしゃになった小さなメモ紙に書かれた、小さな手紙。
消しゴムですれた跡を見ると、想いを私に伝えようと何度も推敲したんだと分かる。
破れそうなこの小さな手紙の文字は、鉛筆が涙で滲んでいて。
ねぇ、この時あなたは何を考えていたの?
何度読んだって、何も分からない、何も浮かばない。あるのはただ、あなたが…君がもういないって事実だけ。
最後の一言には強調するように蛍光ペンで雑に線が引かれていた。
「来世でもまた会いたい」
なんて…さ。
そう思うんだったら、私を置いて独りで逝かないでよ。
待っててね。私もすぐに行くから。
爽やかな風が吹いて、穏やかな春の昼下がり。
私はゆっくりと深呼吸をして、君が旅立ったその場所で、君の元へ行く片道切符に手を伸ばした。
最後に見た君の姿がフラッシュバックする。なぜか優しく微笑んでいてさ、不思議だったの。
でも、今分かったよ。
これが君が最期に見た景色だったんだね。
ゆっくり、ゆっくり、桜が舞っていて、とても綺麗だね。
君が見た最期が苦しいものじゃなくってよかった。
また、会おうね。
おわり
創作お題スロット
推敲/蛍光ペン/フラッシュバック
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