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フルーツロール

フルーツロール🍎です(*´∀`)🌹

名前の由来は、“その時食べたかったから”です。

どうぞよろしくお願い致しますm(__)m

小説は基本、ピカレクスロマン🔫の要素が強く、波瀾万丈な物語。そこから少しずつ、幸せを勝ち取っていくような物語だと思います🔫🍀

よろしかったら、フルーツロールの物語を、楽しんで頂けたらと思いますm(__)m

第十五回ブログで感謝企画②🐚🎇

※第十五回ブログで感謝企画①🐚🎇の続きです。下記からメインストーリーを再開致します↓
―――*

――そしてフラワーの部下にサンダーソニアの居場所を教えてもらった姫百合は、その場所へと向かった。そして出直した先でまた『〝サンダ~ソニアァ~ッ!!〞』と…――

すると次はそこで本人が〝何だ?!〟と言ったように振り返る。ちなみに例の庭には、まだグリフォンと茜もいる。

姫百合は鼻をズビズビと言わせながら、サンダーソニアへと泣き付いた。


「私は過ちを犯しましたっ…人を責めたら私の勘違いっ…理解し難いところはありますが、確かに優しい人のことを脳内でつい妖怪扱いっ…自分過ちのせいで責め立てられっ…なのに勝手に恐怖を感じ怖じ気づきっ…なのに結局親切にされてしまいっ…散々迷惑を掛けた人の前で、鼻をズビズビさせてしまいっ…今日と言う日はなんと最悪な日でしょうっ…自分の全てが恥ずかしいですっ…穴があったら入りたいっ……――」


「っ?!なんだ何だ?!何があった?!…早口でよく分からないが…過ちを反省しているならそれで良いだろう…」


「恥ずかしいのですっ…自分の過ちのせいで、大勢の人の前で赤っ恥をかきましたっ…自分のせいなので逃げ道さえありません~っ!!……」


二人のそんな様子をグリフォンと茜は『なんだ、仲良いじゃねぇか』『姫百合さんにちゃんと頼られていますね!!』と、〝良かった良かった〟と頷きながら眺めている。


「ぅっ…大衆の前であんな恥をさらしてしまうなんてっ…私はもう、“お嫁にいけません”っっ……」


「は?…え?…」


「え?へ?…お嫁に行けまs…――…」


――姫百合は気が付いたようにハッとした。そして『っ!!お嫁にはいけますわっ!!許嫁がいて良かったぁ~…!…』と。姫百合は瞳をウルウルとさせながら、感極まったようにサンダーソニアの片手を両手で握った。
そしてサンダーソニアは“許嫁がいて良かった”と、そう泣きながら手を握ってくる姫百合を眺めながら、目を丸くした。…―そしてそのまま、グリフォンと茜を見る。〝“可愛い生き物ではない”と言った事を忘れろっ!!前言撤回だっ!!オレの許嫁が可愛いっ!!〟と、言ったようにである。
グリフォンと茜は〝へー。良かったなぁー。〟と、しれっとしながら眺め返すのだった。
…―そしてサンダーソニアは〝そうか。そうか〟と頷きながら、ここぞとばかりに手を握り返している。
グリフォンと茜はやはり、しれっとしながら〝良かったな~。〟と。

…――さて今日と言う日は、サンダーソニアにとっては満更でもなく良い日であっただろう。…―だがこの後、姫百合が気掛かりな名を口にするのだ…――


「恥ずかしいところを見せてしまったので…ハイロンとはもう二度と会いたくありません…まぁ、会わないでしょうけれど…」


するとサンダーソニアと、そしてグリフォンまで、怪訝な顔をしながら反応する。『『ハイロン??…』』と…――


「はい。そうです…“ハイロン様”と呼ばれている人でした…」


「まさか…ハイロンとはあの海龍か?いやまさかな…」


「?!その名の知り合いがいるのですか?!…まさか別人ですよね?!私の会った方は何て言うか…――男性なのですが、見た目はあまり雄々しくなく…綺麗系な…――女性をたくさん連れていて…あの、中国の…――」


「っ?!――それはもう、九割がた“珠女神の海龍”だ…」


嫌な予感を感じずにはいられないサンダーソニアであった。思わず『なぜ寄りによって海龍が出てくる?!』と。…―だがするとグリフォンが『そこは“子涵ではなく海龍でマシだった”と喜べ!海龍ならまだそこそこ話が通じるぞ!』と。ご最もではあるが、だいぶスーパーポジティブすぎる思考であろう。

――さておき姫百合は、疑ってかかって喧嘩を売った相手が珠女神のアンダーボスであった事を知り、また顔を真っ青に変えたのだった。〝もしや私のせいで、組織間の関係が悪化する…?最悪抗争に発展するのでは…〟と、姫百合にとってまさに、生きた心地のしない地獄のような最悪の夜である…――


――
―――
そしてその夜の海龍、宿泊先でのこと…――

国から飛び入りで共に来た娘たちの部屋が必要になった関係で、海龍と珠鈴と桃珊は三人で同じ部屋に泊まっていた。そして海龍はと言うと…――


海「威勢の良い娘であったな…オレを睨んでいたぞ…―かと思えば泣き出し、そして走り去った……ああ、あの娘は一体、どこの誰だったのだ…なぜオレは名前すら聞かなかった…!!」


珠「お兄様、またその娘の話ですか?宿についてから、もう四度目です…」


宿についてから何か落ち着かない様子の兄の事を、珠鈴は不安そうに眺めている。〝…お兄様、何だかいつもと様子が違うな…〟と。
珠鈴は眉尻を下げている。だが打ってかわって、桃珊はいつも通り穏やかだ。落ち着かない様子の海龍を眺めながら、寧ろ微笑んでいる。

珠鈴は『お兄様、お兄様、なぜその娘の話ばかりするのですか?』と問い掛ける。すると『さぁな』と言いながら海龍が振り返った。
…―珠鈴は目を丸くした。何と言うか兄がものすごく、楽しそうにニヤついている…――
珠鈴は〝え?!〟と言う顔で桃珊を見る。すると桃珊は可笑しそうにクスリと笑った。『海龍がニヤニヤとしていてキモチワルイですね』と、サラリとそう言いながら。
珠鈴はハッとした。〝私のお兄様が、キモチワルイですって?!〟と。…―そして何やらショックを受けたらしい珠鈴は立ち上がる…―


「わ、私、もう一度大浴場で湯に浸かってきますわっ…!!…」


そうして珠鈴はバッと部屋を出て行った。

そして海龍と二人きりになると、桃珊は可笑しそうにクスクスと笑い始めた。まるで笑いたかったのを、ずっと我慢していたかのように。


「珠鈴に遠慮をして、今まであまり言えなかったのですよ。海龍アナタ、宿泊先へついて三人になった途端、ずっとニヤニヤとしていて本当にキモチワルイですね~!!大勢の女性たちの前ではどこぞの貴公子かのようにキラキラとしているアナタが、ニヤニヤと…とても可笑しいですわ!!」


「桃珊、桃珊…!!つい口元が綻んでしまうオレの気持ちが分かるか?…―今日は良い日だった。生き返った気分だ!!いや天へも昇る思い!!…―あの娘は何なんだ!?華奢な体で威勢よく啖呵を切ってきたと思えば、今度は真ん丸な瞳をウルウルとさせながら見上げてきたっ…なぜあんなにも可愛く愛らしい…!!…リスのよう…―いやモモンガかもしれない…なんて可愛い…!!…」


「あ~、可笑しいですわ!アナタが美しいものを好きだから、周りの娘たちは皆、“可愛いよりも美しい”を目指していますわよ…!!なのにアナタが“モモンガのようで可愛い”だなどと、名も知らぬ女性に夢中だなんて!!」


「可愛いものは可愛いのだ…!!…ああ、だが決して女性に〝モモンガのようで可愛い〟だなどとは言えないな…中には“動物扱いを見下されている”と感じる娘もいるだろう…美しいものに例えれば女性は皆喜んでくれるが、小動物に例えるとなると…当たり外れが出てくるだろう…」


「まったく悪い人ですね…アナタの褒め方がいつも“美しい”を基準にしているから、余計に周りの娘たちが“美しい”を目指しているのですよ。なのにアナタときたら、当たりしか出ない褒め方をするのですから。
…――それにしても、あの娘は小柄で華奢で可愛いらしいけれど、決して豊満ではありませんでしたね。――組織から共に来た二人組がおりますでしょう?あの二人はいつも、バストの大きさや形で言い争っているのですよ。『デカイだけで不格好なスイカ爆弾女っ』『シルエット作りで誤魔化した手作りメロンっ!!』と、言ったようにです。彼女たちのその努力はご存知で??」


「ご存知な訳ないだろうが。知っていたとしても褒められる筈がない…!!…普段彼女たちをいやらしい目で見ていない故、あまり気にした事すらなかったが…」


「なんと言いますか、彼女たちが不憫ですわね…!…」


「オレが女性のバストを基準にするような幼馴染みでなくて良かったではないかっ…?!なぁそうだろう?!…」


『まぁそうですね。そんな幼馴染みだったなら、キモチワルイですわ』と、そう言ってまた桃珊は可笑しそうに笑っている。〝恋に浮かれた心の内を、この人は私の元では楽しそうに話す。恋をしようと、この人が戻る場所は私の元でしょう。―何も問題ありませんわ。〟と、そう確信しながら。


――そしてその頃珠鈴は大浴場を目指して宿の通路を歩いていた。

すると目の端の方で、誰かが慌てて隠れるのが見えた。

〝ん?〟と首を傾げてから、珠鈴はその方へと足を進め、ベンチの影を覗き込む。すると…――


「雨桐?なんでここに?」


隠れていた人物…―雨桐はビクッと肩を揺らした。雨桐は〝見ないでっ立ち去ってー!!〟と言うように、手で顔を隠して後ろを向いている。…――だが誤魔化せずに、珠鈴に顔を覗き込まれた。
観念した雨桐が手を退かすと、そこで珠鈴がニコッと笑っている。


「雨桐!こんな場所で会うなんて偶z…――あれ?…いやここ日本よね…こんな偶然…――」


「ッ?!違うのよ!これはっ…――あの、その…!!…」


〝珠鈴に怪しまれてる…!もし私が雨神に繋がっていることがバレたらっ……〟と、雨桐は顔色を悪くした。


「珠鈴っ…ここで私に会ったことは秘密にしてねっ…特に、アナタのお兄様やお父様には、絶対に内緒よっ…」


珠鈴は『お兄様やお父様…“お兄様”…』と呟いて、察したように頷いた。
〝分かってくれた?!〟と、雨桐は珠鈴の顔色を伺う。すると…――


「なら言わないわね…。けど雨桐、うちのお兄様と仲良くなりたいのなら、お兄様に声を掛ければ良いのに」


雨桐は耳を疑った。思わずポカンとして口を開けている。『え?』と言って聞き返す…―


「いつも私にお兄様の話を聞いてくるではありませんか。雨桐は私のお兄様の事がお好きなんでしょう?」


「何故そうなるの!違います!」


「何故って、“話を聞いてくるから”です。バレバレです!」


「違うわ!!」


そう、話を聞くのは〝全て子涵の為である〞。

だが珠鈴がそう思うのも無理はないだろう。珠鈴は『遠巻きから見ていないで話しかけたら良いかと。お兄様は女性のことを邪険に扱いませんのでご安心を』などと話している。


「ち、違うと言っているでしょう!…だいたい、アナタのお兄様は一体誰のものなのですか!あんなに女性を引き連れた方は御免です!」


「……。“あんなに”とは?…やはり遠巻きから見ているではありませんか…」


「見ておりませんっ!サンダーソニアの仮許嫁である姫百合にまで手を出すとは、一体何事ですかっ!…っ?!…ま、まさかブラッド フラワーと手を組むつもり?!どうなの?!吐きなさい!」


「姫百合?…」


「風鈴祭りで姫百合と接触していたでしょう?!吐きなさい!一体どのような関係なのですか!!」


「今日も遠巻きから見ていたのですね?!そうですか、あの女性は姫百合と言うのね…!安心して雨桐、お兄様とあの人は初対面です」


〝珠鈴はまだ勘違いしてるわ…!〟と思いながらも、雨桐は“情報を聞き出してやろう”と『そうよ、確かに毎回遠巻きから見ているわよ…!海龍のことをもっと教えなさいっ…!!』と、開き直ったのだった。

――こうして雨桐は子涵の元へと戻り『姫百合とは初対面だったそうです!』と。そして珠鈴は海龍に『お兄様~!あの女性が誰であるのか知りたがっておりましたよね?!彼女はサンダーソニアの仮許嫁、姫百合さんです~!!』と、そう話したのだった。

――*

次の日、姫百合は酷く脅えていた。ブラッド フラワー、黒羽家、珠女神の間に揉め事を起こしてしまったと思っていたからだ。

『ああ、どうしましょう…ごめんなさいサンダーソニア…』と、姫百合は朝からまいってしまっていた。それをサンダーソニアが『別に海龍は怒ってなかったのだろう?アイツは珠女神の信仰をしているだけあり女尊なんだ。そんな小さな事を根に持ちはしないだろう。相手が女性なら尚の事』とそう話し慰めている。

だが姫百合の不安はおさまらない。『きっと今に仕返しに来ます…もう終わりです…!』と、そう言って肩を落としている。サンダーソニアは『大丈夫だと思うがなぁ…』と言いながらも、不安がっている姫百合を放っておけずに共にいた。言うなら昨日の夜の時点で姫百合を屋敷へと泊めていたのだ。


「気負いするな。万一何かあろうと、お前も黒羽家も守ってやろう」


――この日サンダーソニアは姫百合を元気付けリラックスさせる為にと、ブラッド フラワーの庭園へと案内した。南国の花を集めた庭へと連れて行ったり、そこで共に食事をしたり…――

朝は沈んでいた様子であった姫百合にも、自然と笑顔が戻っていった。

そして何事もなく時間も流れていく…――


「杞憂でした!そうよ。あの場で全て解決していましたもの!珠女神のアンダーボスであったと知り、いきなり不安になっただけだったのです!思い返せば思い返す程、あの人はまったく怒っていませんでしたもの!」


「だろうな。気にする必要も恐れる必要もない。アイツはそんな小さな事で因縁をつけてくるような奴ではなかった筈だ」


姫百合はすっかり元気になり安心し『はい!お騒がせ致しました。ありがとうございます!』と、そう笑顔で返した訳である。二人の間では解決である。

…だがその日の夕暮れ時のこと…――なんとブラッド フラワーへと、珠鈴と桃珊を連れた海龍がやって来たのだ。

姫百合はまた、一気に地獄へと突き落とされたような気分であった。

そしてサンダーソニアも困惑していた。〝海龍が昨日の件などを根に持っているとは思えない。一体何の用で来た?!〟と。

さておき“海龍が訪ねてきた”と部下から聞くと、サンダーソニアは姫百合に『屋敷の中に入っていろ』と話し、彼女の事を隠した。

海龍は門の前でフラワーの部下に止められているという。〝このタイミングで海龍が来たなら、やはり姫百合の件なのだろうか?〟と、そう思ったサンダーソニアは、“珠女神の沙海龍が訪ねてきた、などという話をあまり大きくしないように”と、仕方なく自ら門へと赴いた。

門の前で海龍は『完全プライベートの用で来た。武器など持っていないぞ?』と、そんな事をフラワーの部下たちへと話している。

サンダーソニアは割って入ると部下たちに『海龍はオレに用だろう。本当に武器を持ってないなら構わない』と、そう話して部下たちにボディチェックをさせてから、仕方なく海龍を招き入れた。

〝本当に何をしに来たのやら…〟と、思いながら“仕方なく”案内をしていると、後ろから『まぁ!素敵なお庭ですわね!』『お兄様、あのお花を見て下さい!とても綺麗ですね!』『ああ。美しい花だ。我が家でも育てるか?』などと言う、浮かれた声が聞こえてくるのだった。〝本当にお前ら、何しに来やがった!?〟と、心から思っているサンダーソニアであった。

そして“…屋敷にまでは絶対に入れたくない…”と思ったサンダーソニアは、庭のガーデンテーブルへと三人を案内した。
だがすると、ガーデンテーブルの先にある花のアーチの後ろから、なぜまたいるのか“奴ら”がこちらを覗いている…――〝グリフォン、茜、そしてコヨーテ〟だ。

〝だからお前らどうやって入ってくるんだよ?!今日は一人多いしよ~!!〟

そしてグリフォン、茜、コヨーテはと言うと『これは急展開したな…』『まさか私の予想が的中したのでしょうか?これは三角関係の予感…―』『兄貴、あの人が珠女神の?』などと、堂々と覗き見しながらブツブツと言っている。ちゃんと門を潜ってきた海龍の事を、いきなりまともに感じてきたサンダーソニアであった。

――さておき〝やはり姫百合絡みの事か?…〟と考え、気を抜けないままサンダーソニアは問う。


「何があったのかはだいたい聞いた。すまなかったな。オレからも詫びよう。…――“アイツ”も昼間までは“お前が来るのではないか”と言っていたのだが…“もう来ない”と思い始めていた頃になり、まさか本当に来るとは…」


「話を聞いていたか。なら話は早いな。…――ところで、それは“彼女がオレを待っていた”という話か?…―」


「〝待ってねぇよ〞。当たり前だろう…!!…」


〝一体コイツは何を言っているんだ!〟と、サンダーソニアは〝はぁ?〟と言う顔で口を開けてしまった。〝待ってねぇよ!“来たらどうしよう”って脅えてたんだよ!〟と。
そして〝待ってねぇ〟と言われた海龍は『そうか…そうだな…』と、深刻そうな俯き加減である。だがすると珠鈴が…――


珠「そんな、私のせいだわ…ごめんなさいお兄様っ…!!だって私のせいで、来るのがこんなにも遅くなってしまったんですもの…!…姫百合さんにも悪い事をしてしまったわ…だって〝昼間まではお兄様の事を待っていたけれど、いつまで経っても来ないから落ち込んでしまった〟って事でしょう…!」


サ「海龍妹、それも違う…!なぜキミの思考はそうなった?!」


すると珠鈴は『お兄様の事を待っていない女性なんて見た事がないから!』と。
〝そんな訳ねぇだろうが?!珠女神って組織は海龍の大奥か何かかよ!!〟とツッコミを入れてやりたい気持ちをぐっと抑えるサンダーソニアであった。

そして〝違う〟と言っているのに珠鈴は『お兄様、ごめんなさい…』と。海龍は『可愛い妹よ。お前のせいではない。当たり前だ。昼間は楽しかったな。それで良い』と。桃珊はクスクスと笑っている。


珠「私がっ…私が〝プールに行きたい〞だなんてワガママを言ったからっ…」


〝いやお前ら昼間プールで遊んでたんかい!〟と、サンダーソニアから言わせたら、もうそもそも本当に、コイツらは“日本に何をしに来たんだ”状態である。…―そう彼らは本当に〝遊びに来ただけ〞である。

すると隠れる気もないグリフォンが『なぜそこが“海”じゃなくて“プール”だ!』と。『白真珠の肌が…焼けてしまったら大変だ…』と、そう言い張る海の女神の信者三人組。…―そう〝屋内プールで遊んでた〞。


海「ああ、そう言えばプールで会った日本人が、とても良い人だったぞ」


サ「…お前はプールの感想を話したくてうちに来たのか…本当にお前は何を……」


海「運営側の何かの係員のような男性だったのだが、オレの背中の珠女神のタトゥーに興味があったらしい。しきりに珠女神のタトゥーの件を話題にしてくるので、オレも嬉しくなってしまってな…つい良かれと勧誘をしてしまって…」


G「…何だ、逃げられたか?」


海「まぁ確かに逃げられたんだ。だが彼は“とてもいい人”だった。低姿勢にもう一度来たかと思ったら、オレにラッシュガードのパーカーを差し出しながら、言ったんだ。『お兄さん、もういいから、コレ羽織ってて…コレあげるから!!…』とな。なぁ、とてもいい人だろう?」


Gサ「「………」」


G「お前それはさ……〝タトゥー入ってる人、お断りな屋内プールだった〟んじゃねぇの…??……」


海「〝へっ??〞」


〝宗教勧誘で係員を無意識撃退しちゃ駄目だろうがっ!!〟

――さておき、何故かサンダーソニアの方から咳払いで仕切り直し『で、海龍、何の用で来た?』と、そう問い掛ける。

〝何故お前が仕切り直してやってんだ?!もう追い出せば?!海龍が抜けてるからって、コイツついうっかり親切にしてやがるっ!〟と、そう思っているグリフォンであった。


海「…ああ、まず聞きたくてな。“仮許嫁”とはなんだ?」


サ「は?何だと?」


サンダーソニアはポカンとしている。
…―グリフォン、茜、コヨーテは〝うわっやっぱし姫百合狙いで来やがった…!確定だ!〟と、思っている。…―だがやはり、サンダーソニアは〝は?何だ?〟と言う顔をしているのだった。


海「仮許嫁とは何だ?許嫁とは違うのか?知らぬ日本語だ。日本語を調べても載っていない」


サ「?…―それはそうだ。なら、“仮”だけを調べれば良いのだ」


グリフォンたち3人は耳疑った。

〝アイツアホか~?!仮の意味知ったら“何だ仮の許嫁か!”ってなっちまうだろうが~?!姫百合かっ拐われるぞ~?!なに日本語の先生やってんだぁ~?!〟

そして〝アイツはまだ、海龍の狙いに気が付いていないのか?!〟と、驚愕である。

そして海龍は珠鈴と桃珊と一緒に“仮”の意味を調べ始めた。そして案の定…――


海「〝何だ仮の許嫁か!〟」


そしてサンダーソニアはまだ気が付かないのか、フンと鼻で笑いながら頷いた。


海「お前と姫百合は仮なんだな?」


サ「それが何だ?仮だろうと、沢山いすぎて選べなそうなお前などよりは、ずっと充実している」


海「姫百合に心惹かれているのだ。仮なら良いか?姫百合にアプローチしても」


瞬間、盛大に飲んでいたアイスティーを、海龍に向かって吹き出してしまうのだった。
『キャ~?!私のお兄様に唾液混じりの汚れた水がぁ~?!』と、珠鈴が叫び声を上げる始末である。
そして海龍はキュッと目を閉じたまま、嫌そうな顔で『ばっちぃ…』と、一体その日本語をどこで覚えたのか?何故か方言で言っている。


サ「お前なんて言った?!言った日本語の意味間違ってないか?!」


海「“ばっちぃ”…“汚い”…」


サ「そっちを聞いた訳ではなーい!!」


言いながら〝汚くて悪かったな!顔洗って目ぇ覚まして、頭を冷やせ!〟とでも言ったように、ウォーターポットの中身をそのまま海龍にブッ掛けた。珠鈴の悲鳴が止まないのだった。そして桃珊が『あらあら…』と言いながら、取り出したハンカチで、濡れた海龍の髪や頬を拭いている。
『傍にそうやってくれる女を携えたようなお前には、尚更姫百合は渡さねぇ!!』と、サンダーソニアはカンカンである。


海「なぜだ!仮など候補に過ぎないだろう!」


サ「お前っ!だからってそれは不謹慎だぞ!!」


海「〝心惹かれてしまった〟!!なぜお前に止められなくてはいけない!」


サ「宣言されれば普通止めるだろうが?!」


海「律儀に話したのだ!仮なのだから、後は姫百合次第ではないか!」


サ「っ?!…待て待て待て海龍っ…!道徳を重んじろっ!!確かにそうだが…―そこは普通、オレに喧嘩を売らずにお前は身を引くべきなのだ!」


海「身を引かなかったのなら後はオレの自由だ!仮なのだから!」


サンダーソニアと海龍は睨み合っている。
…―だがすると、サンダーソニアの眺める海龍の表情が、突然ハッとしたようなものへと変わった。『何だ?』と思いサンダーソニアは後ろを振り返った。
…―すると何故か、煉瓦造りのアーチに隠れながら、そこから姫百合が顔を覗かせている。

〝なぜいる?!屋敷の中にいろと言ったのに!?〟と、サンダーソニアは顔色を悪くしたのだった――

…―サンダーソニアは〝早く屋敷の中へ戻っていろ!〟と、姫百合へと必死にアイコンタクトを送った。だが姫百合はと言うと…―


姫「サンダーソニアッ!た、助けに来ました!」


サ「……。はい?!」


〝また、何かを勘違いしていた〟。

そして姫百合は自らこちらへと走ってくる。そして海龍の前で足を止めた。


姫「き、昨日は確かに私が悪かったです!ですが昨日は昨日!今日は今日です!私が悪かったけれど謝りましたっ!昨日の小競り合いをネタにして、ブラッド フラワーを脅そうとは、卑怯ではありませんか!」


桃珊と珠鈴は気の毒そうに顔を見合わせ合った。『あら、また誤解されていますね…』『お兄様が可哀想…』と、そう話しながら。

――桃珊と珠鈴は気に掛けるように海龍を見た。だがするとそこで海龍が、何かジ~ンとしているような様子で、目を輝かせながら姫百合の事を眺めている。

―――*

第十五回ブログで感謝企画③🐚🎇へ続く

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