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フルーツロール

フルーツロール🍎です(*´∀`)🌹

名前の由来は、“その時食べたかったから”です。

どうぞよろしくお願い致しますm(__)m

小説は基本、ピカレクスロマン🔫の要素が強く、波瀾万丈な物語。そこから少しずつ、幸せを勝ち取っていくような物語だと思います🔫🍀

よろしかったら、フルーツロールの物語を、楽しんで頂けたらと思いますm(__)m

第十五回ブログで感謝企画①🐚🎇

皆様いつも本当にありがとうございます!第十五回ブログで感謝企画、題して〝Flowerと海のトライアングル💘時々ANGELと雨〟始まります!

本日の感謝企画、司会進行は瑠璃と絵梨でお送り致します!そして本日のゲストはウルフとリリィです!

『ウルフはその席へ。リリィさんはこの席へ』と、絵梨がゲストたちを席へと案内し始めた。

ウルフが案内された席のテーブルの上には、赤薔薇のフラワーバケットが置かれていた。そして隣のリリィのテーブルには、百合のフラワーバケットが置かれている。


瑠「ウルフの席にはレッド エンジェルをイメージした赤薔薇を。そしてリリィさんの席には、ブラッド フラワーを象徴する百合の花を飾っておきました」


リ「もしかして今回って、フラワーの末裔である私と、エンジェルの末裔であるウルフを呼んだの?」


瑠璃と絵梨は『正解!』と。そう、その通りである。そもそもそれぞれの席に置かれたプレートを見れば〝RED ANGEL〟と〝Blood Flower〟と、そう書かれているのだった。


瑠「レッド エンジェルとブラッド フラワーと言いましたら、日本の裏社会を牛耳る二大勢力ですね。…――そして“第十一回ブログで感謝企画”で、“爺ちゃんたちの若かれし頃のお話”が解禁されたわけですよ!」


W「…確かに爺ちゃんなのだが、言い方がラフすぎるだろう……裏組織先代のドンだぞ…」


絵「“爺ちゃんは爺ちゃん”です」


瑠「はい。さておき第十一回はエンジェルのグリフォン様とフラワーのサンダーソニア様が一髪触発な話だった訳です。――さて〝ここで問題です〞」


W「なぜクイズ形式…」


絵「Q,ヤンキー映画をご想像下さい。1(ワン)で拳で語らい何やかんやで絆を結んだ同学園のヤンキーたち。さぁ、2(ツー)では一体、彼らに何が起こる??…――」


リ「はい!〝ピンポーン〞!!」


W「口で言うタイプのセルフピンポン…」


瑠「はい、リリィさんどうぞ!!」


リ「〝2では他校のヤンキーの襲来がテッパンだ!!〞」


絵「〝正解です!!〞…――つまり皆さん、もうお分かりですね?今回のお話は…――」


W「あ?!まさかっ……いや待て…さすがに〝ヤンキー〞で例えたりしないか……」


瑠「今回のお話は〝爺ちゃんたちの若い頃の話第2段!!チャイニーズマフィア、海龍(ハイロン)と子涵(ズーハン)がやって来たの回⭐️〞です!!」


W「それを他校のヤンキーに例えるな!!」


そして、そこでウルフとリリィはハッとした。そしてバッと、隣の二つの空席を見る…――

ブルースターとデルフィニウムで作られたフラワーバケットに、〝珠女神(ヂュニュシェン)〟のプレート。そして、蓮とガマで作られたフラワーバケットに、〝雨神(ユーシェン)〟のプレート…――


リ「珠女神と雨神の末裔たちはどうしたの??」


絵「〝来てくれません〞でした…ケチです…『キミたちの敵です』だとか『子涵の直系じゃないし、末裔名乗って良いのかも分からないから』とか…言い訳ばかり…!」


W「ド正論だろうが」


さておき〝なのでこの席には私たちが〟と、珠女神の席に瑠璃、雨神の席に絵梨が座るのだった。


瑠「では、時系列と内容の説m…―」


リ「あっ待って!!第十回ブログで感謝企画で…――!!私のお祖母様が意味深発言をっ!!…『海龍、私はアナタが唯一落とせなかった女のままなのです』と!!」


瑠「ご安心下さいリリィさん!!ここにいる私たち、ウルフ以外は皆女!!〝掘り下げたかった話は女3人同じです〞!!」


W「オレを置き去りにするな…。と言うか、だったらなぜヤンキー映画で例えた?!」


絵「〝恋の一髪触発〞という訳です。Flowerと海のトライアングル💘時々ANGELと雨です。」


瑠「では時系列の説明です。時系列は五十数年前。“まだ皆未婚”。シラー様やサンダーソニア様、海龍様たち、当時だいたい18~20歳くらい。珠女神はまだ存続しています。

――第十回でスパイダーも気になっていました。〝もしかしてシラー様と海龍って、リリィちゃんと桐島みたいな感じだったの?〟と…――さぁ、独身時代の二人はどんな関係だったのでしょうか?そしてサンダーソニア様にライバル出現か?…――Flowerと海のトライアングル、始まります――」


――
――――――*


―大きな黒い龍の画が飾られた、赤塗りの柱が立ち並ぶ部屋の中で、雨神(ユーシェン)の子涵(ズーハン)は振り返った。


「なに?また海龍(ハイロン)が日本へ?…―」


問いかけ振り返った先には、ウェーブの掛かったオレンジみの茶色い髪を一まとめにして結った女が立っている。――女の名は雨桐(ユートン)。子涵の幼馴染みである彼女は、後に子涵の妻になる女である…―


「子涵、間違いありません。私のことを“友人”だと呼んだ海龍の愚かな妹…―“珠鈴(ヂュリン)”が教えてくれましたもの」


雨桐は子涵の、その冷たい雨を沈めたような瞳に向かって必死に話をしている。…――血の溶けた海を映したような、不吉な赤みを混ぜた、彼のその瞳に――

―雨桐は昔からこのような女であった。子涵の冷たい瞳に、自分だけは特別なモノとして映りたいと願うが故に、まるで小間使かのように、自らスパイまがいなことをしては、こうして子涵に報告をするのだ。


「…海龍め……まさか奴も、日本に目を付けているのではないだろうな…――
――あの国はいずれ表社会から侵食し、雨神のものとする。オレの代で準備を始め、その次の代では…――」


「……――」


雨桐は子涵の様子を伺いながら、子涵が一言〝よくやった〟と、そう褒めてくれるのを待っていた。…――だが子涵は組織のことを考え苛々と眉をひそめると、そのまま雨桐の横を通り過ぎて行く――


「?!…待って子涵!どこにっ…!…」


「“日本”だ」


「っ?!…な、なぜ…今からですか…??…急すぎます…!…」


「……―お前が報告したのだろう?海龍の企みを暴かずに、こんな場所でゆっくりとしていられるものか」


雨桐は子涵を追って足を動かした。


「今から向かい、いつ戻るのですか…!明日はっ…明日は私に付き合ってくれると、約束したではないですかっ…!…」


「オレに付き添わせたい場所があるのなら、また今度誘ってくれ。――オレは日本へ行く。付き添いたくば勝手についてこい」


「っ!?…私も行きます…!!…」


途端機嫌を直したように、雨桐は口元に弧を描いたのだった――


――そしてその頃珠女神(ヂュニュシェン)では、同じように海龍が発とうとしている。…―さて、本当のところ、海龍が日本へと行く理由とは?…――

―金箔の貼られた金色の部屋には、海の女神、珠女神の大きな画が飾られている。そして壁の一面は大きな水槽になっていて、光の灯ったキラキラとした水の楽園の中で、気持ち良さそうに魚たちが泳いでいた…――

そんな中、珠女神の兄妹、海龍と珠鈴は仲睦まじげに手を取り合い、向かい合っている。
…――黒真珠のような艶やかな髪に、白真珠のような肌――切れ長で涼しげな目尻…――海龍と珠鈴は、良く似た兄妹であった。


「お兄様、ついに“アレ”を着れますわね!珠鈴はとても楽しみです!ああ…待っている1ヵ月がとても長く感じましたわ!…」


「珠鈴よ、兄もとても楽しみであるぞ?可愛い珠鈴に良く似合うことであろう」


「あらお兄様ったら、それなら珠鈴の方が、もっとずっと楽しみにしていたのです!美しいお兄様に、良く似合うことでしょうと…――」


「「“日本の浴衣”!!」」


――そうそれは、遡ること約1ヶ月前の事である。フラりと日本に遊びに行った海龍と珠鈴が、いつの間にか日本の町が、浴衣売場だらけに変わっていたことに衝撃を受けたのは…――。浴衣を“美しい”と感じた二人は即浴衣選びを始め、即購入した訳である。
…――そうそして約1ヶ月後の現在、日本へと舞い戻ろうとしている理由はもちろん〝日本の夏祭り目当て〟であった。

――つまり〝子涵と雨桐、海龍と珠鈴の温度感は、だいぶズレていた〟訳である。

そして珠鈴と海龍は『お兄様…!』『よしよし可愛い妹よ』などと呼び合いながら身を寄せ合っており、兄妹だとは思えない距離感の仲睦まじさである。

…――するとそこへと、しとやかに微笑む一人の女性がやって来た。彼女もまた、美しい黒髪をしていた。


「海龍、またそんなに珠鈴を可愛いがり…――アナタは可愛い妹を、お嫁に行かないようにさせるつもりですか?」


海「桃珊(タオシャン)、オレにそんなつもりはない。可愛い妹の門出を祝ってやるのも、兄の務めであろうからな」


珠「…けれど確かに私、お兄様と同じくらい素敵な男性としか…一緒になりたくありませんわ…」


海「珠鈴、安心しなさい。兄も自分と同じくらいか、自分以上の男にしかお前を渡さないつもりだ」


珠鈴はその黒目がちな瞳をキラキラと輝かせながら、憧れの兄を見上げていた。

桃珊と呼ばれた女は、依然しとやかに口元を綻ばせている。――海龍の幼馴染みである桃珊は、後に海龍の妻になる女だ。

――そしてそんな話をしていると、珠鈴が『お兄様、あれは??』と、そう小さく海龍へと耳打ちをした。すると海龍も口元を綻ばせて頷く。

桃珊は二人の様子を〝一体なにかしら?〟と、不思議そうに眺めていた。
…――すると海龍が両手を使い、何かを丁寧に桃珊へと差し出した。


「日本で桃珊に似合う美しいモノを見付けた。…―これはオレからの贈り物だ」


「あら、一体なにかしら?胸が高鳴りますわ」


海龍から差し出されたものは、白地に藤の花の柄の入った浴衣であった。穏やかな桃珊のように、しとやかで品のあるデザインのものだ。


「まぁ、なんて美しい!…―アナタが私の為に選んで下さったの?とても嬉しいわ。ありがとうございます」


「その藤が桃珊のしとやかさに良く似ていた。贈らずにはいられない」


「ふふ、誰にでもお優しいアナタは、本当に罪な人ですわね。…――こんなに素敵な贈り物を貰ったなら、私と珠鈴以外の女性は皆勘違いしますわ」


「誰にでも贈ると思うな」


『どうかしら』と、そう返して桃珊はクスクスと可笑しそうに笑っていた。

――こうして海龍と珠鈴、桃珊の三人は、浴衣を持ち日本へと小旅行へと向かったのだった…――


――そして時間は流れ、それは日本の夕暮れ時の出来事である。


「……で?何故お前がうちの庭にいるっ…!…」


ここはブラッド フラワーの壮大な敷地の中。サンダーソニアは苛立ちを抑えきれないまま、目の前の男を眺めていた。
“目の前の男”とは、レッド エンジェルのグリフォンである。更にグリフォンと共に、グリフォンの後の妻である茜(後のルビア)も共にいた。
グリフォンとルビアは当時見合いを得て交際関係にあったのだ。

――さておき何故、この二人が犬猿の仲である筈のフラワーの庭にいるのか…――


G「ようサンダーソニア。何だ、ここお前ん家だったのか?茜と散歩をしていたら…――」


茜「ごめんあそばせ!!綺麗な花園に誘われて、迷い込んでしまいましたわ!!」


サ「迷い込んだわりに満喫しすぎだろう?!人ん家の庭の人ん家のガーデンテーブルで、勝手に茶ァ飲んでんじゃねぇ!――それとお前たち、毎回毎回あっけらかんとしやがって!謝罪に誠意を感じねぇんだよ!!」


茜「きゃ-怖い!!グリフォン様っサンダーソニア様が怖いですわ!!…ま、まさか私たちの仲睦まじさに嫉妬を?!…」


G「そうか、器の小さい男だな~!――姫百合(シラー)との仲はどうだ?そんなにカッカしていたら、女が逃げてしまうぞ?なぁサンダーソニア!」


サ「黙れっ!大きなお世話だ!お前らなどに嫉妬などする訳ないだろうが?!礼儀知らずな非常識カップルなどになぁ!!」


後のサンダーソニアの妻であるシラーの本当の名は“黒羽 姫百合(クロバネ ヒメユリ)”と言った。

姫百合は代々ブラッド フラワーと協力関係にある暗器の使い手である一家、黒羽一家の娘である。

そしてサンダーソニアと姫百合の関係は、“拒否権のある仮許嫁(いいなずけ)”であった。

そう、幼い時から“許嫁”として双方の親から紹介されてはいたのだが、それは絶対ではなかったのだ。

それは双方の親同士で決めた“仮許嫁の契約”であって、砕けて説明したなら〝他にどうしても好きな人が出来てしまったなら仕方がない。その時は契約の解消もあり得るだろう。ただし、二十歳を過ぎた時にそのような相手がいなかったなら、二十一歳になる前までには許嫁と結婚すること〟と、そのような内容のものであったのだ。


G「本当に“大きなお世話”だったか?どうなんだ?…――二十歳までまだ一年はあるぞ。優しくしてやらねぇと、誰かに取られちまうぜ?」


茜「ええ。安心してはいけません。“仮”許嫁なのですから。…――小柄な華奢で、お目目がくりんとしていて、姫百合さんはとても可愛らしい女性です。なんて言うのでしょう?まるでキュートなリスのような!!あんなに可愛らしいのですから……〝誰かに取られてしまいますよ〟!!」


サ「フン。お前らは何も分かっていない。…何が可愛いリスだ…それは“見た目”わな。…――暗器使い黒羽一家の娘(姫百合)は、そんな可愛いらしい生き物ではない。
それにアイツは警戒心が強い女なんだ。寄ってきた男を蹴散らさなかった事がないのだぞ?」


G「あ?“だから安心”だと言いたいのか?なぜ全ての男を蹴散らす前提だ!姫百合だって、ときめいてしまう時があるかもしれないだろうが」


だがすると、サンダーソニアは可笑しそうに声に出して笑った。


サ「だから何も分かっていないと!姫百合は恋にも男にも酷く無頓着だ!暗器を磨いてうっとりとしているような…―そんな女なのだ!…大抵の人間は全く相手にされずに蹴散らされれば、傷付き自然と身を引くものだ」


サンダーソニアはそう可笑しそうに話をしている。〝いくら見た目が好みであったとしても、蹴散らされれば大抵の者が身を引くものだ。――それに警戒心の強い姫百合が、ナンパ者などになびく訳もないしな〟と…――

――そしてグリフォンと茜は居座り、去るつもりもなさそうだ。そしてサンダーソニアも、何やかんやと言いながらも二人と会話をしているのだった。…――すると茜が『本日姫百合さんはどこに?』と。『ああ、アイツは確か…――』と、サンダーソニアは話し始める…――


――さぁ、その頃の姫百合は、一体どうしていただろうか?…――

姫百合はその頃、この季節に毎年執り行われている町の風鈴祭りへと足を運んでいたのだが…――


「答えなさい怪しい男!女性を大勢連れて何をしているのです!アナタが近頃騒がれている、女性をたぶらかして捕まえ人身売買をするという、噂のゲス男なのではないですか!」


そう話し姫百合がドーンと指差した先には…―一体どこでどう連れが増えたのか、珠鈴と桃珊以外の女性も数十人連れた、珠女神の海龍がいるのだった。

姫百合は何かの勘違いで熱くなっているようだが、海龍は涼しい顔をしながら『“ゲス”とは何だ?知らぬ日本語だな』などと言いながら、リンリン言っている風鈴の下、浴衣姿で扇子を扇ぎ、とても涼しそうである。
そして珠鈴と桃珊は〝あら何かしら??〟と言ったように、きょとんとしながら顔を見合わせている。二人も浴衣姿に扇子でとても涼しそうである。
そうして海龍と珠鈴、桃珊はきょとんとしているが、海龍の他の取り巻きたちは『何ですってアンタ!失礼でしょうが!コノちんちくりん!』『海龍様がそんな事をする筈ないじゃないの!このチビ出目金!!』と、怒り心頭であった。…――すると姫百合も『っ…め、目は確かに丸いですが、出てはいませんわ!!』と。
…――そしてその様子を眺めていた海龍は『こら仲良くしなさい』と、そう言って可笑しそうにクスリと笑う。そして海龍は、口元を綻ばせながら姫百合へと向き直った。


海「…―それでお嬢さん、オレに用ですか?」


姫「…こ、この大勢の女性たちは、一体、どうしたのですか…!本当のことを言って下さい!これは事情聴取ですよ…!」


そう彼女もまた、裏の世界に通じる者だ。黒羽一家はこの時、人身売買をしているシマ荒らしの男を捜していたのだ。…――だがどうした事か、若い頃の姫百合にはこのように、突っ走って真っ正面からぶつかるような、困ったところがあったのだ。


海「…―そうか姫君たちの事が気になるのだな」


姫「ひ、姫君…??……」


姫百合は〝…は?え?〟と言う顔をしているのだった。
すると海龍が、依然涼しそうな顔のまま、スラスラと説明し始めるのだ…――


海「この娘はオレの妹だ!この娘は幼馴染み!…――この娘とこの娘は同じ仕事(組織)の者。屋敷の中でバッタリ会い『共に行きたい』と言うので連れてきた。この娘はオレの国の娘だ。泣いていたので声をかけた。泣き止み共に来た。この娘もオレの国の娘だ。身を投げようとしていたのでそのまま連れてきた。この娘は…――」


姫「ちょっ……ほ、本当のことを言いなさい!!」


――だがその後も“本当のことだが”と前置きしてから『この娘は日本の子だ。悪い男に捕まっていたので連れてきた。この娘もこの娘も日本の子だ。意気投合したので共に来た。この娘は隣の朝顔市の売り娘だ。『風鈴祭りに行く』と言ったら『行きたい』と言うので仕事終わりに共に来た。この娘は先ほどここで会った。気に入った風鈴が高い場所で取れなかったらしい。取ってあげたら『もっと共にいたい』と言うので共にいる。この娘は…――』と、延々と続くのだった。

そして取り巻きたちは争うこともなく海龍の言う“この娘”の話を快く聞き、『海龍様お優しい~!!』などと声を上げ、キャーキャーと言っているのだった。

――姫百合には理解し難い空間と思想であった。〝女性を大勢連れて、遊び人に違いない。…それに、他の女性の事も引き連れたような男に、キャーキャーと言っている彼女たちも分からない…〟と。

話を聞きながら姫百合は、顔を青くしながら引き気味である。『分かりませんわっ……』と、思わず数歩後退りする始末であった。…――だがすると、僅かに浮き上がっていた地面の敷石に躓き、転びそうになってしまう…――


海「大丈夫ですか?!」


海龍は咄嗟に姫百合を支えた。


姫「っ…あ、ありがとうございます…」


…――そうして姫百合は顔を上げる。顔を上げた先で海龍は『何が原因なのかは良く分からないが…とにかく何か、オレがキミを驚かせてしまったせいなのだろう…ごめんな。そのせいでキミが転びそうに…』と、そう申し訳なさそうに言っている。
――姫百合はパチパチと瞬きをしている…――そして海龍の後ろ側では、また取り巻きたちが『海龍様お優しい~♪』とキャーキャー言っていた…――姫百合が『私の不注意なので…』と答えると、海龍は『………けどとにかく、キミが転ばなくて本当に良かった…』と。…――そして姫百合が『はい』と言って頷くと、彼は『本当に良かった』と、そう言ってこちらに向かい、ニコリと微笑んだ――

――姫百合は目を丸くしながら、またもやパチパチと瞬きをしていた。…―依然取り巻きたちは、海龍の後ろでキャーキャ-と言っている…――

目の前でニコリと微笑んでいる彼を見ながら、この時、恋と男に無頓着な姫百合は、こう思ったのだ――
〝ああ、この笑顔に皆やられるのだろうか……そうか分かった彼は、尊き女性たちを大勢の取り巻きの内の一人、すなわち…尊厳を欠かれた哀しきモブ1モブ2へと変えてしまう、ある意味ワルい妖怪なのだろう…〟と。
――姫百合の人生の中で、こんなにショックな出来事は初めてである。
…―そう姫百合にとって海龍とは、男性らしからぬ美貌と優しい言葉で女性たちを虜にしてしまう、何かが化けたかのような、女性モブ製造妖怪であったのだ。

…――海龍の後ろでキャーキャーと騒いでいる取り巻き(モブ女たち)の声が、遠く聞こえてくる…――流行りお洒落でバチバチにめかし込み、キャーキャーと同じような事を騒いでいる女たちの顔の違いが、最早姫百合には分からなくなってきた…――〝その他大勢化〟とは、なんと虚しく恐ろしい現象であろう…――

だが姫百合がそう放心していると、一人違った行動を取る女が現れる。


「それでアナタ、結局何なのよ!私、アナタの事を許してないわ!ボーっとしてないで、人違いで疑ったことを、早く海龍様に謝りなさいよ!!」


女の気迫に押され、姫百合はビクリと体を揺らした。だが確かに姫百合が悪かっただろう。それは彼女自身が一番よく分かっていた。…――だが一人が“謝りなさい”と発言すると、珠鈴と桃珊以外の女たちも口々に『そうよ!』『謝って!』と言い始める。…――彼女たちの言うことは最もであったのだが、全員で言うのは良くなかっただろう。そう〝トラウマ級に怖すぎる〟。――すると〝これは良くない〟と、海龍が宥めに入った。


海「待ちなさい。彼女を責めてはいけない」


「ですが海龍様っ…!」


海「皆オレの為に言ってくれたのだな。ありがとう」


「はい、もちろんです!!」


海「うんうん。ありがとう。…――けれどもう良いからね?彼女を責めてはいけない。彼女はキミたちを心配してくれていたのだぞ?“彼女は人身売買をしている男を探しているらしい”のだから」


「っ!!……」


海「彼女がキミたちを心配し、またその卑劣な輩を成敗しようとしていること、オレは嬉しかったのだよ。…―だから、ね?」


すると取り巻きたちも単純なもので、深刻そうに頷いて『…はい。ごめんなさい海龍様…』と。――そして姫百合には『キツく言ってしまってごめんなさい』『人身売買をしている卑劣な輩を追っているだなんて、アナタすごいわ!かっこいい!』と。
海龍の鶴の一声で、姫百合は一躍彼女たちの中で英雄状態である。

――海龍も安心したようだ。姫百合に向き直ってニコリと微笑んだ。だがすると…――振り返った先で、姫百合が瞳をウルウル、鼻をズビズビと言わせながら泣いている。
〝なぜ?!〟と、海龍は目を丸くした。


海「一体、どうしたのだ…」


暴走して疑って人違いであった恥ずかしさやら、大勢の女性に叱られて怖かったやら、なのに優しくされて安心したやらで、とにかくそれらの全ての感情が、涙となっていたのだ。

そして姫百合は〝とにかく自分の行動の全てが恥ずかしくなった〟と『本当にっすみませんでしたぁっ』と、ズビズビしながら謝り頭を下げると、逃げるように翻して海龍の前から去った――

――走り去りながら姫百合は、まだ顔から火が出るような思いである。

…――夜空へと上がり、そこに華を咲かせ始めた花火にさえも、目もくれない…――

〝なんて恥ずかしい日っ…!!私が未熟で愚かでしたっ…!!もうあの人とは、一生会わずに生きていけますようにぃ~…!!〟


…――そして姫百合はその足で、逃げるようにブラッド フラワーへと駆け込み、屋敷の扉をバッと開いた。


「サンダ~ソニアァ~ッ!!…――」


……が、当然、エントランスには本人がおらず、その場にいたフラワーの部下たちが〝何だ?!〟と言ったように目を丸くしながら振り返るのだった。


―――*

第十五回ブログで感謝企画②🐚🎇へ続く

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