弄月鬼、二章・第八話
*明治天皇について〜
今回お千が話していた慶子(正しくは『よしこ』。ルビに誤りがありましたが訂正済みです)は、明治天皇の生母にあたる人物です。
彼女は中山忠能の次女として産まれましたが、里子に出されて幼少期を八瀬で過ごしました。(史実です)
17歳で宮中に出仕し、孝明天皇の意を受けて__早い話が、“お手つき”となって__懐妊し、実家の中山家で後の明治天皇である皇子・祐宮(さちのみや)を出産したそうです。
明治天皇は5歳まで中山家で過ごした後、宮中に転居し、7歳の時に孝明天皇の后・九条夙子(くじょうあさこ)の実子__生母である慶子の実家は地位が低く、孝明天皇の正妻とはなれなかった為__とされ、睦人と諱(いみな)を賜り親王となりました。
睦人内親王は14歳で明治天皇として即位しましたが、その擁立には薩長が深く関わっており、陰謀説すらあるようです⋯⋯
先帝の孝明天皇は攘夷を説いていましたが公武合体を推進した穏健派で、佐幕派でもありましたから、その急死は幕府主体の政治体制に多大な影響を及ぼした事でしょう。
そして、その影響は薩長にとってあまりに都合よく作用し、ついには倒幕を成し遂げたのですから、陰謀説を含めた様々な憶測が飛びかうのも頷けます。
この激動の時代に翻弄される人々を、薄桜鬼における“鬼達”と置き換えたならば⋯⋯
美月や千鶴の境遇に同情を示すお千の心境や、人間を嫌いつつ人間に味方する風間達の心情も、その輪郭ぐらいは掴めそうな気が致します。
*追記。諱とは〜
士分以上の身分の人々が有した実名(本名)の事で、基本的には親や主君、その人よりずっと高位にあたる、それこそ天皇ぐらいしか呼ぶ事を許されない、特別な名前です。
美月は『“睦人”内親王』と、はばかりなく天皇の諱を呼んでいましたが、美月は既存の封建社会とは少し異なる世界で育っていますので⋯⋯。
シェア
コメント
ログインするとコメントが投稿できます
まだコメントがありません