会社を唐突に辞めて途方に暮れていた大場せつ25歳。
明日からどうしようかと思っていたところに故郷から電話が入る。
幼馴染の御堂ゆうきが急逝し、葬儀に出るために帰郷したせつは、懐かしい町の中に「たなばた堂」を見つける。それは遺品や古い品に刻まれた「記憶」をクリーニングする不思議な店だった。「アシスタントをしてくれるなら、二階に住んでもいい」と店主から条件を出され、行き当たりばったりに店に勤めることになる。
店主と、彼にそっくりな姉との生活は不思議で、居心地がよいものだった。実家からニートの妹が押しかけてきたり、生理前症候群や辞めた会社で受けたトラウマに苦しんだりしながら、少しずつ癒されてゆく。せつは死んだゆうきが幼い頃の姿で自分に寄り添うのを感じていた。ある日、ゆうきの妻からゆうきの遺品である指輪を譲られる。せつは、ゆうきとゆうきの妻は本当に愛し合っていたのだと感じる。昔、ゆうきの家があった実家の隣は売地になっていたが、ついに買い手がついた。雨の日、せつはゆうきの母がその土地を見ているところに出くわす。せつは、ゆうきの母から、ゆうきの妻が妊娠していることを聞かされ衝撃を受ける。
やがてせつは新しい就職先を見つけ、「たなばた堂」に別れを告げる。「たなばた堂」最後の晩は星の川のお祭りの日だった。願いを書いたたんざくを川に流した時、屋台の煙が靄のように川にかかった。その時せつは、向こう岸に旅立つ幼いゆうきの姿を見る。胎児の姿に還ったゆうきは、きっと生まれ変わるのだろうとせつは感じた。