ゆきの中のあかり①

作者汪海妹

17歳で両親と弟を失って一人ぼっちになってしまった塔子さん。転入先の高校で大好きだった弟と雰囲気の似ている柊二君に会います。彼女の深い悲しみに触れた柊二君は、大学を卒業するとすぐにその悲しみを癒そうと塔子さんと結婚しますが、事故が起きて彼は死んでしまい、塔子さんは再び一人ぼっちになってしまいます。…

決して満ちることのない月のようだと思う。2人の関係は。

それでも、どこか欠けたままであっても、触れていたかった。掬いあげても掬いあげてもこぼれる水が、それでもいつかこぼれずに、そしていつか月が満ちると信じたかったんだと思う。この時は、まだ、自分は若かった。

柊二の物を初めてあいつから奪いたいと思っていた。

柊二は何も言わない。

あいつ、死んでからもっと澄んだ目になって、ほほえみながら俺を見ている。その目はやっぱりあの朝と同じ。あの結婚式の日の朝と同じ目をしていた。

心のずっと奥のほうに、友人の面影はやはりたたずんでいた。今も。

…本文より抜粋 by中條拓也 32歳