その日、僕は春菜の助けを借りて、知人というラインを越えて、初めて彼女の世界のようなものに一歩、足を踏み入れた。
僕は、その時まで芽衣のことを遠くから眺めていて、そして、よく知りませんでした。
芽衣は、とても強固な壁を持っている人でした。それは透明な壁だった。だから、彼女に近づいてみようとする人でなくては、彼女がそんなに強固な壁を持っている人だなんて気づかない。
「今日、呼び出したこと、怒ってる?」
「怒ってはないですけど、松尾君は間違ってると思います」
「間違ってる?」
「絶対勘違いしてます」
「……」
本文より抜粋①
「ごめん」
つい、そこでポロリと謝ってしまった。
「なんで謝るんですか?」
「芽衣が俺に好きになってくれと頼んだわけでもないのに」
「……」
「芽衣からしたら、事故に巻き込まれるようなもんだよね」
ため息が出ました。
本文より抜粋②