むかし、むかし、あるところに、体のどこかに痣を持つ人々がおりました。



生まれながらに浮かびあがるその痣は、濃く鮮明であればあるほど、良いとされました。



男児であれば、将来、巨万の富を得るとも、国の為に精進し出世するとも言われました。



女児であれば、良縁に恵まれ、子宝に恵まれ、何不自由ない暮らしを死ぬまで存続させられると言われました。




けれど、一つだけ不吉とされる痣がありました。



それは、本来体の一部だけに現れる痣が、全身を覆っている者でした。


その子が生まれ出でると、国は荒れ、人々は廃れ、

やがては世界に禍が起こると言われていたのです。



そして、今。



ある国で、一人の痣者が生まれ出た。


全身を覆う黒々とした蔦の痣を持つ女児は、その国のお姫様になるはずでした。


けれど、その国の王様は、禍を恐れ、お姫様の存在を民に隠す事にしたのです。



こうして、お姫様は生きて、死んだ存在に成り果てました。