鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛

物語全体のあらすじ

　大人の雰囲気漂うオシャレな街の大通りにある老舗チョコレートブランド『YAMATO』に入社して四年目で、秘書室に勤務している高梨侑李二十六歳は、終業後、家の事情で会社に禁じられていた副業をする日々を送っていた。

　

　そんなある日、仕事を終えて下町情緒あふれる裏路地にある自宅に帰宅すると、入院中の父の代わりに家業である老舗料亭『橘』を取り仕切っている兄の侑磨から、友人の借金の連帯保証人になっていたこと。その友人が蒸発して、一千万円の借金の取り立てを、ガラの悪い輩に迫られていることを告げられる。

　けれど、老舗料亭を営んでいるといっても、昨年末に看板女将だった母は病気で急死し、父も先月急病で今も入院していて退院の目途もたっていない。兄が頑張っていても両親が居ない穴は埋められず経営は傾く一方で。運の悪いことに、最近店を改装しそのローンの支払いもあるため、父の入院費も侑李の副業で賄っていたため、とても一千万円なんて返す当てもなかった。

　それでも先祖代々江戸時代から引き継がれてきた店を守ろうと、気落ちしてしまっている兄を励まし、兄妹で力を合わせてなんとかこの危機を乗り越えようと、副業である老舗ホテルのアルバイトの時間を増やして頑張っていた矢先、この春『YAMATO』の副社長に就任したばかりの神宮寺隼の修羅場と出くわしてしまうが、隼は気づいていないようでその時は難を逃れることができた。けれど、その後すぐに借金取りに身体の関係を迫られたところを隼に助けられ、結局は副業していることがバレてしまうことに。

　その所為で、少々他人に理解され難い性癖の持ち主であるらしい隼から、副業を見逃す代わりに協力してほしいことがあるといって脅迫されるが、断固拒否したところ、隼は意外にもあっさり諦めて立ち去った。のだが……。　

　返済期日である当日、帰宅した侑李を待ち構えていたのは、ガラの悪い借金の取り立てではなく、なんと、隼とその秘書の蔵本涼だった。

　どうやら店に通い詰め、人がよく騙されやすい兄を手懐け、隼が借金の建て替えをする話になっていて、返済は侑李の給料から天引きにするという。大きな借りを作ってしまった侑李は、翌日には、不本意ながら隼と雇用契約を交わし、恋人のフリをすることになったのだった。

　翌日、仕事でも、副社長に就任したばかりで多忙を極める隼の第二秘書まで勤めることになってしまい。終業後には、わざわざ秘書室にまで現れた隼から、同僚の居る前で、派手な告白をされた挙句に、その後食事をするために連れていかれた料亭『橘』では、兄や従業員の前でも恋人宣言までされてしまい、その気になった兄に、結婚の話まで進められ激怒した侑李は、兄や隼の会話に加わるのが嫌で冷酒ばかり飲んでいたため、酔い潰れてしまう。

　そして目覚めた時には、隼の住んでいるタワーマンションの寝室のベッドで。侑李がここに居るのも兄の余計なお節介の所為だと知りますます激怒する侑李だったが、隼に、『業務命令』だと言われてしまえば従うしかなく、散々身体を弄ばれて抱きつぶされてしまうことに。これまで大学生の時の元カレとの経験から『不感症』だと思っていたのに、身体の相性が驚くほど良かったらしい隼の愛撫に今まで感じたことのなかった快感を味わい戸惑うばかりだった。

　その上、細身だと思っていた隼の格闘技で鍛え上げられた逞しい体躯や、不意に覗かせる優しさ、料理好きなところや、眼が悪いらしい隼のメガネ姿に隠れメガネフェチだった侑李はそのギャップに胸をときめかしてしまう自分に戸惑いを隠せない。侑李は知らず知らずのうちに隼に魅かれていくが、素直になれない侑李は自分の気持ちに気づかないふりをする。

　そんな侑李は『業務命令』といって週末は一緒に過ごすように言われ、一緒に過ごすうち少しずつ気を許していく侑李。そんな中、子供の頃に『橘』で隼と出逢っていること。その当時『YAMATO』の次期社長の兄と自分の立場にコンプレックスを持っていた隼は、侑李のお陰で後継者の一人としてこんな小さな女の子に愛されるチョコを守っていきたい、そう思わせてくれた侑李に恩返しのつもりで一千万を立て替えたこと。理想通りであった侑李のことを好きになったことを打ち明けられることに。

　けれど、一千万のことがあるため気持ちには応えられないと伝えるが、一か月でなんとかするからその時にまた気持ちをきかせて欲しいといわれる。それからは気持ちをストレートに伝えてくる隼に想いは募るばかりの侑李は、隼の秘書である蔵本からこれまで誤解していたことや知らなかったことを聞かされることに。結局侑李は隼と本物の恋人になるのだが……。少々アブノーマルな性癖を持つ隼との交際には様々な試練が立ちはだかるのだった。