「俺から離れないで」
甘い囁きとともに、鮮やかに行われる壁ドン、そして顎クイ。
容姿端麗な王子・エデュアルトのその行動は、まさに少女漫画のワンシーンで、居合わせたメイド達はその美しさに卒倒する。
しかし、当事者であり、主人公のアイシャは「今日も完璧です!!」嬉しそうに微笑む。嬉しそうだが、全く心に響いていない。
その様子に項垂れるエデュアルトと、それを不思議そうに見るアイシャ。
―これは、少女漫画好きな転生令嬢と、女性恐怖症の王子の長期戦ラブコメディである。
辺境伯の令嬢アイシャの前世は、少女漫画が好きな平凡な会社員だった。
まさに漫画のような転生に喜び、優しい両親のもとで大好きな恋愛小説を愛読する日々。
しかしある日、第七王子・エデュアルトの「家庭教師」として王城へ招待される。王立図書館で読書し放題というエサに釣られ、アイシャは使者と共に王城行きの馬車に乗り込むと、使者・キーファから王子の「恋愛」の家庭教師になるように告げられる。
その仕事内容は、第七王子で次期国王でもあるエデュアルトの女性恐怖症を克服させ、最終的には結婚できるよう導くことだった。
前世も今世も恋愛経験が無いのに!?と内心悲鳴を上げるも遅く、王城に連れられてしまう。
対面した王子は想像以上に幼く、10代前半のかわいい王子にキュンキュンするも、目が合った瞬間に逃げられ呆然とするアイシャ。
女性恐怖症のエデュアルトの想いを察し、アイシャは自ら髪を切り揃え、少年のような姿になってしまう。
貴族令嬢とは思えない姿と、エデュアルトに向き合うための決意に、驚くエデュアルトとキーファ。エデュアルトは逃げたことを謝罪し、アイシャと向き合うことを約束する。
こうして、エデュアルトとアイシャの物語が始まった。
少女漫画の知識を駆使し、エデュアルトを立派な王子に育てようとするアイシャ。
姉のように慕っていたアイシャへの恋心に気付く、エデュアルト。
身分も過去も隠し、二人に寄り添うキーファ。
3人の想いの裏側で、徐々に壊れていく王国。
長い時間をかけて惹かれ合う想いは、どこへ行きつくのか。