これは、異なる歴史を辿った世界の物語。
熟練の狩人ランドルフは呪いによって魔獣と化し、森をさまよっていたところを美貌の騎士ディアナに救われる。

「私を殺してもらいたい」

月光の下。
微笑みを浮かべ、「彼女」はランドルフにそう願った。
自らも「魔獣」であり、不死の「呪い」を受けた存在である、と……

 男は狩人だった。

 近隣の村に害をなす魔獣を狩り、報奨金にて生計を立てて暮らしていた。


 狩人たるもの、熟知していたはずだった。

 魔獣の中には、人間に流行病のごとく「呪い」を移す種が存在する、と……


 だが、毎日をつつがなく過ごすうちに、油断は生まれた。


 気付いた時にはもう遅い。

 対処する暇もなく「呪い」はあっという間に進行し、彼を蝕んだ。


 男の犬歯や爪はやいばのごとくとがり、全身が黒い体毛に覆われる。

 そして、ひどく、腹が減った。



 仲間たちは結託けったくし、彼を守った。本来ならば即座に討伐すべきところを、見つかりにくい場所に移送して保護することに取り決めた。

 それだけ、男は人々に信頼されていた。信頼されるに相応しいほど、男は優秀な狩人だった。


 男は涙した。慕われていたことに。仲間たちの優しさに。


 運命の残酷さに──


「なぜ……」


 むくろと化した仲間たちを前に、男は慟哭した。

 到底人のかたちと呼べない瞳孔が、血のように赤い涙に濡れた。


「ナゼ、殺シテクレナカッタ……!」