博士と少女は無限の未来を飛び越えたその先を見ようとした、

鮮やかな着地が決まると世界中がどよめいた。

「やりました日本!」

怒涛の拍手と歓声。負けじとアナウンサーも興奮気味に絶叫する。

「二十個目の金メダルです。本当に強くなった体操女子。破竹の勢いは青天井です」

コーチが肩を叩いて労をねぎらい、少女が顔を真っ赤にしてレオタードを濡らしている。

その熱気は殺風景なコンクリート建屋にまで容赦なくなだれ込んでくる。

「まったく明けても暮れても五輪五輪。早く終わってくれんかのう」

老人が苦虫を嚙み潰したように顔をしかめる。うっかりして助手に換気を命じたために神聖な研究室が堕落してしまった。

だいたい体力の限界を追求するなど低俗の極みだ。だいたい医学的に見て運動神経などという器官は存在しない。ましてや随意運動など幻想だ。