そして、目の前の景色が一変した。
「…………、
何、 これ?
愛理栖、こ、 これどういうこと?」
僕は驚きと恐怖で顔を歪めた。
メガネ越しに見える世界は、
色とりどりの光や影が渦巻き、
波打ち、飛び交っていた。
普段見慣れた建物や人や動物は、
その中に埋もれてしまっていた。
「ひかるさんは、普段見ている世界が全てだと思いますか?」
愛理栖は僕に優しく尋ねた。
気がつくと僕は不思議な世界にいた。
色とりどりの雲がふわふわと空に浮かび、
変わった形をしていた。
雲は小さくなったり大きくなったりと、
きれいな模様を形造っていた。
先生が教えてくれたマンデルブロ集合を思い出した。
それは同じ図形が小さく入れ子になって、
どこまでも続く不思議な図形だった。
だけど、それだけじゃない。
僕は心が温まるものを感じた。
ここは天女の羽衣や極楽浄土を連想させるような、幸せな場所だな。
僕はそう思った。