君に出会わなければよかった夏

作者兎束作哉


 また嫌な季節がやってきた。



 夏。思い出したくなくても、この季節になると思い出してしまう。蝉の声とか、蒸し返すような暑さとか、屈辱にも自分より背の高いひまわりとか、そんなんじゃなくて。



 引っ越してきたばかりの男子に恋をして、告白するなんて暴挙に出てしまったこと。

 後悔と一緒に、泳ぐことが好きだったあいつの塩素の匂いがどこからか漂ってきた。