夕日の中へ駆ける君に、「また明日」と言う事ができていたら

作者井関和美

大学生の葵生は、付き合って一年以上経つものの、それらしい振る舞いをしてくれない恋人の直樹に対して複雑な思いをしていた。
付き合うきっかけとなったのは直樹が描いた一枚の絵。その絵を含めて、直樹がいつも描いているのは一人の少女であり、いつしか葵生はその少女に嫉妬に近い感情を抱くようになる。

そんな葵…

大学生の葵生は、付き合って一年以上経つものの、それらしい振る舞いをしてくれない恋人の直樹に対して複雑な思いをしていた。

付き合うきっかけとなったのは直樹が描いた一枚の絵。その絵を含めて、直樹がいつも描いているのは一人の少女であり、いつしか葵生はその少女に嫉妬に近い感情を抱くようになる。


そんな葵生を見かねた親友の美雪が機転を利かせ、ゼミのレポート作りの為と称し、直樹の故郷である田舎町への遠征を図る。それに同行する事になった葵生だが、その翌日、直樹に対して何故かひどい怒りを見せるその町の青年――勝と出くわした。


「『あいつ』の墓参りに行ってこい!」

「『あいつ』の葬式なんて、いつやったんだよ」


噛み合わない会話をする二人。そしてさほど時間を置かない間に、勝は『あいつ』と呼んでいたとある存在を忘れてしまった。

『あいつ』というのが、直樹の絵の中の少女である事にやがて気が付く葵生だったが、直樹もまたその少女の事を忘れつつあった。そうなってしまう前にと、直樹は高校時代に起こった出来事を葵生に語り始める……。


(完結作品)