月下美人のような君

作者runb_neco

君はある隠し事をしていた。
それを聞いた僕は…。
月下美人の花言葉にちなんだ作品です!

月下美人のような君


みなさんは月下美人という花を知っていますか?

一年に一晩だけ、それも新月や満月の夜にだけ花を咲かせ、朝にはしぼみ、その後二度と開くことはありません。

日が昇る頃には昨夜の美しさが嘘のように、色も香りも失われてしまいます。

そんな月下美人のような君とのお話。


君と出会ったのは梅雨明けの日。

夕方の公園で黄昏てる君を見つけた。

年齢は中学生くらいのようだ。

髪が長く、ストレートで、綺麗な黒髪。

僕は目が離せなかった。

すると、ふとこっちを向く彼女。

僕は彼女に話しかけた。

「はじめまして。この辺で見かけなかったけど僕と同じ中学校?」

彼女は無言で首を横に振る。

「あのさ、君はここで何をしてるの?」そう聞くと、彼女は「ここから見る景色が好きなの。」と一言だけ言った。

僕は母からお遣いを頼まれていたのでその日は帰った。


また次の日。

学校帰りに公園に寄ると昨日の彼女を見つけた。

今まで見たことなかったのに突然現れた少女。

僕は彼女の事が気になった。

「ねぇ、またここから景色を見てるの?」と僕は彼女に話しかけた。

しかし彼女の口からは思いがけない言葉が出た。

「あなたは…誰…?」

僕は唖然とした。

「誰って、昨日君と会ったんだけどもう忘れたの?」

すると、彼女は「あぁ、そう。」とだけ呟いた。

僕は、ますます彼女の事が気になった。


僕は彼女と色んな話をした。

だが、彼女は秘密を隠している様だった。

「その秘密、僕に教えてくれない?」

彼女は答えた。

「私は、記憶を一日で忘れてしまうの。だから昨日あなたと会ったことはもう記憶の中から消されていたの。」

予想外の答えに僕は驚嘆(きょうたん)した。

「その病気は治らないの?」と僕は彼女に聞いた。

しかし、彼女は寂しそうな顔で「この病気は治療法がないの。だから一生付き合っていかなければいけないの。」そう言った。

「だったら、僕が毎日君の友達になってあげる!」

「えっ…。」

「友達がいないなんて寂しいじゃん?だから…」

「でも、あなたのこと忘れて傷つけてしまうのが怖い。」

「大丈夫。僕は君のこと信じてるから。それに君の事がとても好きだ。」

僕は気持ちが溢れてそう口に出していた。

彼女は泣きながら「ありがとう…。」と言った。

それから、毎日彼女の初めての友達になる事になった。

昨日の僕との記憶は無くなってしまうけど彼女は嬉しそうだった。

優しい笑みの裏側、曇ったその心は、時が経てばいつか晴れ渡るのかな。


月下美人の花言葉『はかない恋』。