曰くつきの古い祠「クロカミヅカ」で出会った青年は、夢の中で「迎えに行くと」言ったその人で……。黒い袴、漆黒の髪、朱い瞳。冷たい手をした青年の正体とは?
「もう少し、マシな嘘はつけなかったのか?」
突然、暗闇の中から声がして、
私は目を凝らす。
大きな窓の月明かりを背に、
“黒い人影”がこちらを向いていた。
「あなたは、誰?」
彼は何も答えない。
その代わり、カラカラ---
と、小さな音を立てて窓が
ひとりでに閉まった。
※この物語はフィクションです。