今日が僕らの命日だとしたら

作者碧瀬 空

「もうすぐだね、結婚式! これからもよろしくね、透夜」
 縁の言葉を耳にしたのはそれが最後だった。
 だって、僕はもう、名前のない「夢飼い」だから――。

  独白


 「もうすぐだね、結婚式! 

 これからも、末永くよろしくね、透夜……なんちゃって」


 縁の言葉を耳にしたのはそれが最後だった。


 もう二度と呼ばれるはずないその名を、

 呼ぶこともない彼女の名を、僕は追い続けている。


 僕がどれだけ、

 君への想いで胸を焦がしていても、君には届かない。


 だって、僕はもう、君の知る僕ではないのだ。


 名前を失ってしまった、

 名もなき「夢飼い」だから――。


 こんな道を選んで、独りよがりでごめんね。


 

 それでも、君を死なせたくなかった。


 他の何を捨ててでも。


 ※本作品は、

「僕の海馬を君に贈りたい」のシリーズ

 第二作目なっております。

 本作品のみでもお読みいただけますが、

 そちらも読んでいただくとさらに楽しめる

 仕様となっています。

 詳しくは作者ページをご閲覧ください。