時は明治。一人の女に近づく男と、それに無意識に近づいてしまう女。しかし、本当の女の姿はてんびん座の………
カツン、
と、下駄が石段にぶつかる音が聞こえる。
赤く紅く、染められた鼻緒が一歩一歩上っていく。
それが向かうのは、
「やっぱり、きれいだな。」
「また来たのか。お前もなかなか暇なのだな。」
鳥居にもたれて笛を吹く、女のもと。
ふわり、ふわりと、
葉が散るように無意識に近づく。
今日も今日とて、日の国は平和で。
それは人は誰も知らない、天秤のおかげなのかもしれない。