どこにでもあるような“風貌”のある屋敷。
そこにはどこにでもありそうなある家族が住んでいた。

少女はその日、男に出会い、
また男は少女に出会う。

強くふるまう少女は、小さく震え、そんな少女にもお構いなしに銃口を向ける男。
「まだ死にたくない。父のもとに行くつもりなんて毛頭ないわ。」
体は小さく…

ある屋敷に一人の男が訪れた。

男の両手人差し指には“あるもの”を使い慣らしたがためにできる固く小さな豆。


カツカツと静かに靴が床を蹴る音が“静かになった”屋敷に響く。




「そこにいるのは誰だ。」


その声に一人の少女が肩を震わせる男を向く。が、その眼は強く光を宿していた。

「お前も父のもとに行くか。ひと思いで終わらせてやる、目を閉じろ。」



「いいえ、まだ死にたくない。父のもとに行くつもりなんてない。」

強い言葉とは裏腹に、小刻みに震える少女。だが、相も変わらずその眼には光が宿っている。


「…ならばついてこい。今夜のことを誰かに口外すればそれはお前が死ぬ時だ。」



少女は今夜のことを秘密にすると男についていく。

男もまた多くは語らず、少女もまた詮索しなかった。


男女の話…


少女は女性に成長してもなお、秘密を守っていた。

しかし、そんな彼女には、男にも話せないもう一つの秘密があった。


秘密、糸…




2021.01.03~