亜香里

必読!
千鶴子と大和、それぞれの視点によって進めらる本編では、二人を含め、その時代に生きる人々の心情が痛いくらい鮮明に描き出されています。

けれども、そのために現代で待つ家族、特に序盤反抗的な態度を見せる月子の感情を読み取ることが困難になり、本編で繰り返される大和の月子への思いが空回り気味な気がして個人的に物足りなさを感じていたんです。



月子編を冠するこの番外編はその物足りなさを補って余りある作品となっています。

本編のファンの方はもちろん全ての番外編に目を通されていることと思いますが、万が一読まれていない方は本編が完結した今、特にこの番外編にも触れることをお勧めします。

月子の心情のみならず、本編の、ストーリーにと言うよりは感情的に重要な伏線も配してあり、数ある番外編の中でも一番本編に近い作品となっているのではないでしょうか。

これを読み終えたあとには、きっとまた本編を読み返したくなりますよ。