11月の終わり、季節はずれの転校生やって来る。
「今日から隣の席になる神崎朔也だ。宜しくな葵葉!」
「………どうして…私の名前?」
「はみ出し者同士仲良くしようぜ。」
出会って早々、馴れ馴れしく私に絡んでくる転校生の彼。
友達なんていらない。
何度も何度も繰り返して来た悲しい別れに、私はいつしか一人でいる事を選んだ。
一人が寂しいなんて感情も、人と触れ合う事が楽しいなんて感情も随分昔に忘れてしまった。
私の心は空っぽで、ひどくつまらない人間だ。
こんな私なんかに関わらない方が良い。
何度も貴方を遠ざけるのに……どうして貴方は、こんな私なんかに優しくしてくれるの?
最初は鬱陶しいと思っていたはずの彼の存在が、どんどん私の中で大きくなって行く。
そして…彼は私を何故かとても懐かしい気持ちにさせる。
この気持ちは何?
貴方は…誰?
貴方の事なんて嫌いなはずなのに…
どうして私はこんなにも貴方の事を知りたいと願ってしまうの?
彼の優しさが、氷のように冷え切った私の心を溶かして行く。
そして……
溶かされた氷に隠された真実。
それはとても残酷で……とても暖かいものだった。
『願いが叶うなら ー冬物語ー』