願いが叶うなら③―冬物語―

作者汐野悠翔

11月の終わり、私のクラスに季節はずれの転校生がやって来た。

転校初日から何故か私にしつこく絡んでくる転校生の彼。

正直最初は戸惑って迷惑だと思っていたはずなのに、彼といるとふとたまにとても懐かしい気持ちにさせる。


この気持ちは何――?
貴方は誰――?

貴方の事なんて嫌いなはずなのに、ど…

11月の終わり、季節はずれの転校生やって来る。




「今日から隣の席になる神崎朔也だ。宜しくな葵葉!」


「………どうして…私の名前?」


「はみ出し者同士仲良くしようぜ。」




出会って早々、馴れ馴れしく私に絡んでくる転校生の彼。





友達なんていらない。



何度も何度も繰り返して来た悲しい別れに、私はいつしか一人でいる事を選んだ。



一人が寂しいなんて感情も、人と触れ合う事が楽しいなんて感情も随分昔に忘れてしまった。



私の心は空っぽで、ひどくつまらない人間だ。




こんな私なんかに関わらない方が良い。




何度も貴方を遠ざけるのに……どうして貴方は、こんな私なんかに優しくしてくれるの?





最初は鬱陶しいと思っていたはずの彼の存在が、どんどん私の中で大きくなって行く。

そして…彼は私を何故かとても懐かしい気持ちにさせる。




この気持ちは何?

貴方は…誰?




貴方の事なんて嫌いなはずなのに…

どうして私はこんなにも貴方の事を知りたいと願ってしまうの?








彼の優しさが、氷のように冷え切った私の心を溶かして行く。





そして……



溶かされた氷に隠された真実。




それはとても残酷で……とても暖かいものだった。




『願いが叶うなら ー冬物語ー』