緑茶
還る場所、そして再生。
本を読み終わった時、背表紙を閉じて一呼吸置き、掌の上で改めて表紙へ戻るように。
物語の最初と最後に繰り返される一頁に、思わず振り返ってしまう彼女達の夏。
兄、そして恋人。大切な人を失った初対面の二人の女性が、寝食を供し知り合って行く中で、互いに支え、励まし合って、喪失・絶望の淵から“還る”物語。
“成長”ではなく、
それは“再生”。
深い深い心の傷。
ただ舐め合うのではなく、その傷をなぞりながら、一針一針に思いを込めて縫い合わせるように癒す二人の姿に、胸が締め付けられます。
生命の力強さと、儚さ、優しさが、著者様の巧みで美しい言葉によって描き出されています。
そこには紛れもなく大きな“愛”があるのですが、既存の言葉では表しがたい大きな力で包み込まれるような、そんな暖かなストーリー。
純文学でありながら、どこかファンタジーの要素を感じます。しかし細やかに書き上げられた文がひどく現実的で、まるで友人の話を聞いていたような気分です。
あぁ、還ってきたのね。
思わず優しい笑みが零れる、素敵なヒューマンドラマ。