みち
喪失と再生
物語の冒頭は、唐突なる兄の死に直
面し「茫然自失」としているシーン
からである。
つまるところ、喪失から始まるの
だ。喪失、とは失うこと。積み重ね
てきたものを、抗うことができず、
失ってしまう、それは私にも経験が
あることだ。事実は認識しても、実
感が伴わない、そんな感じだった。
主人公と私が違うところは、「せつ
な」という存在。もちろん、私以外
の誰もがその存在を持たない。準ず
ることが合ったとしても。
けれど、主人公と私、他、誰もが共
通としているのは、そこから「立ち
上がる」力を持っている、というこ
と。きっかけはそれぞれでも、皆同
じく。持っているのである。それこ
そが「再生」。そして即ち、生きる
ということ。
人が、生きている、物語だ。
なんて、堅苦しく書いたものの、実
に読みやすく、胸に来る物語でし
た。