小泉秋歩

本当の愛の姿が、ここにある。
故郷を遠く離れ、都会で暮らす女子高生・杉野さやか。
少々古風で、透き通るように白い肌を持つ美しい彼女は、悲しい宿命を持っていた。
誰にも言えない秘密。期限付きの自由。定められた未来。
その宿命ゆえに、誰も愛すまいと思う彼女は、しかし、同級生の岸健一と運命的な恋に落ちてしまう。
2人はさやかの二十歳の誕生日の前日まで幸せな日々を送っていたが――

とても幻想的な恋愛小説。
文章が非常に洗練されていて、まるで上質の絹を撫でているかのような滑らかな心地よさ。冒頭の1頁目から独特の美しい雰囲気に惹きこまれることでしょう。
前半の、都会での健一や仲間達との賑やかな学校生活の描写もさることながら、後半の故郷における描写が特に素晴らしいです。木漏れ日や澄んだ空気や清浄なる水の流れを、文章の中から感じ取ることができました。
また、寛の複雑な感情にも共感できる部分があって、物語に深みを与えていると感じました。

読後感もとても爽やかで、色々な意味での「愛」の意味を教えてくれる良作です。
ありきたりの恋物語に飽きた方にもお勧めしたい作品です。