作品コメント
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- しずく
さようなら、愛しいひと
古くからの言い伝えが残る故郷の村を離れ、都会で一人暮らしをしながら高校に通うさやかには、誰にも話すことのできない大きな秘密があった。
彼女の母は、不安そうな目をして念を押します。
「成人までは、あなたの好きなように生きなさい」
「ただし、必ず帰ってきなさい。本当のあなたとして」
運命に束縛された自由の中で出会った、一人の少年へと揺れ動く心を必死で抑える主人公の想いが切なく、それは彼女が成長していく全てのシーンで、悲しくも愛しい感情を引き起こします。
恋人との幸せな日々。
出会った時から知りえた悲しい別れ。
愛しい人を犠牲にしても、守り続けるべき使命。
それら全てが重なりあいながら、物語は、優しい「さようなら」へ繋がります。
さやかの選んだ道は、女性が生きていく強さを感じずにはいられません。
物語を通して流れるのは、肌を潤す霧雨のような美しい言葉の表現。
胸がつまるような、繊細で愛しい日々です。
きれいなことば。
きれいな色。
きれいな人。
どこかほっとしたい時に体に入れるならば、小雨さんの透き通った物語をどうぞ。 - 小泉秋歩
本当の愛の姿が、ここにある。
故郷を遠く離れ、都会で暮らす女子高生・杉野さやか。
少々古風で、透き通るように白い肌を持つ美しい彼女は、悲しい宿命を持っていた。
誰にも言えない秘密。期限付きの自由。定められた未来。
その宿命ゆえに、誰も愛すまいと思う彼女は、しかし、同級生の岸健一と運命的な恋に落ちてしまう。
2人はさやかの二十歳の誕生日の前日まで幸せな日々を送っていたが――
とても幻想的な恋愛小説。
文章が非常に洗練されていて、まるで上質の絹を撫でているかのような滑らかな心地よさ。冒頭の1頁目から独特の美しい雰囲気に惹きこまれることでしょう。
前半の、都会での健一や仲間達との賑やかな学校生活の描写もさることながら、後半の故郷における描写が特に素晴らしいです。木漏れ日や澄んだ空気や清浄なる水の流れを、文章の中から感じ取ることができました。
また、寛の複雑な感情にも共感できる部分があって、物語に深みを与えていると感じました。
読後感もとても爽やかで、色々な意味での「愛」の意味を教えてくれる良作です。
ありきたりの恋物語に飽きた方にもお勧めしたい作品です。