もう下がれない。
もう逃げられない。
彼が途中でタバコを携帯灰皿に片付けるのは見た。
その光景が最後。
真広先生は罪を犯した。
いや、私も共犯者になった。
タバコの香りがきつい。
彼の唇が離れた感触をきっかけに、私はようやく目を開けた。
今起きた出来ごとに、ぼーっ・・・とする。
彼は私よりうんと背が高いから、必然的に見下ろされている。
更には逃げ出したいのに、先生の両手は私を挟む様に、フェンスをしっかり掴んでいる。
不安や戸惑いや悲しみや驚きなどの感情が溢れてどうしようも無い。
だからそれらが全て伝わる様に、複雑な表情で彼を見つめた。
どうしたらいいか、わからなかった。
だから問う。
「どうしてですか?」
「どうしてだろうな」
「なぜですか?」
「なぜだろうな?」
本当に分からない。
人も恋もゆっくり成長する
【アンダンテ】で・・・
※アンダンテとはイタリア語で”歩くような早さで”という意味で、楽譜の速度記号の一つでもあります。
蒼海が卒業した後の物語。
【アンダンテ②】も完結!!
どうぞ併せてお楽しみください⭐︎
その他、新刊【その目に映して】、完結作品の【運命の恋】、【大人恋愛〜オフィスラブ〜】も宜しくお願いします♪
MAI