眠空

悪夢が醒めることを、暗闇に光が注がれることを。
問題提起や性犯罪被害者の代弁的役割といった意味では、とても重要な作品だと思います。

作品を通して浮き彫りになる人間の性、悲しい出来事の数々。
痛ましい事件に身も心も傷つき、追い打ちをかけるように信頼する人々が離れていくという悲しい結末。

読んでいる方も打ち拉がれる思いです。


ただ、後書きを読んだ上で思ったのは、いくら現実味に重きを置いた作品だとしても、やはり小説作品である以上、主人公に発展的な事象を与えて欲しかった。

希望や救いという都合のいい事までは言わない。せめて一つの光明は見えて欲しかったと思ってしまいます。


……とはいえ、やはり「現実は甘くない」のでしょうか。


これといった明言もできず、もどかしく遣りきれない思いです。


現実問題として、いかに理解を得る事が難しいか、泣き寝入りから脱却する事がいかに困難かをつぶさに知る事ができ、深く考えさせられる作品です。


これは主人公だけでなく、世間全てが抱える闇です。

どうか悪夢が醒めることを、暗闇に光が注がれることを願うばかりです。