二重スパイ…
ある勢力が送り込んだスパイが、同時に相手側のスパイでもあること。また、その者。
「ひくっ、私、元は普通の女子高生だったんだよぉ〜」
なのに何で…。
「攘夷志士への間者なんかやらされるわけ?!」
「ハハ、もう今更じゃないですかー」
うるさい沖田総司!
「てか、まだ諦めてなかったのかよ」
黙れ黙れ黙れっ、土方顔だけ野郎!
「うーん、嫌ならここから出る?」
わー、優しいー近藤さん。
でもこの人、二面性なんだよな。
「私が帰る家ないって知ってて、言ってますよね?」
「ありゃ、バレたかーはっはっはっ!」
皆んなが口を開けて笑い出す。
まるで仲間みたい。
でも、私は敵なんだよ、皆んな。
仲間の皮を被ってるだけなんだ。
……なんて、口が裂けても、言えないけど。
「では、遼くん。報告頼む」
だけど良心は痛まない。
コイツらだって鬼だから。
脅しをかけて私を、女の子を平気で死地に送る。
「はい。攘夷志士は近々、何かを起こそうとしている様子で。三日前、火薬や武器の買占めが行われました……また、それが行われる人数はだいたい……」
澄ました顔で漏らせる限りの情報を伝える。
「分かった。また、頼む」
「へいへい……」
あぁ、本当になんでただの女子高生がこんな命の綱渡りをしてるんだろ…。