星崎すず

あの名作が桜色となり再び
Hiro*Rose様の短編小説「君は蝶になった」
儚く美しく感動的な傑作です。
この繊細な作品を男性作家様がどのようにリメイクするのか、非常に楽しみでした。

原作の煌めきや透明感を彷彿させる文学的な描写を織り混ぜつつも、基本は遊び心満載の軽快なラブコメ風味。
更新される度、別物としての魅力を堪能しました。
ヒロインのゆり音に健康美さえ感じてしまうほど、若い二人は作品の中で生き生きとしていました。
しかし終盤に差し掛かった時、その空気が一変します。
やはり、来てしまった……。
原作のラストの、胸の最奧がチクチクと痛みながらも文章から目を逸らせず震えたあの感覚が蘇りました。
確かに違う感性の色で描かれてはいるのですが、むしろそのギャップが生み出す緩やかな同調が涙を誘います。
違う方向から涙が流れて来るようで、原作の記憶が呼ぶ涙と混ざり、大きな感動となりました。

桜の下の蝶は少年を想う少女が残した影か、少年の心が作り上げた幻想か。
問い掛ける私の胸中で、蝶はただ静かに舞っています。