男は今日まで何の為に生きてきたのか、
何がしたかったのか…
もう、全てどうでも良いこと。
そう―
今の男には、必要ない。
――――
そうだ…次のページを捲ってみろ。
男はその指示に従い、手元の本を捲る。
やけに暗い…古びた聖堂、
男の手元を照らすのは蝋燭の頼りない灯と…
窓から照す星明かりだけ。
《……、………》
男は言語に近い発音で、手元の本の文字を呼んでいく…
普通なら、読めるはずのない言葉。
それを…糸も容易く読み解く事が出来るのは、
傍らに立つ人成らざる者の影響か…
男はしきりに儀式を続けていた。
聖壇、だろうか…
その上に…『本』
手前に、直径15cmくらいの“何か”の『卵』。
…男は呪文を唱え続ける。
………
……。
遂に、《その時》が来た。
亡者と『隠者』の見守る中…
最後の呪が唱えられる…
それは、自らを代償に………