ひな

そこにある風景
時代は昔、場所は山の中。
見えるのは覆い茂る緑、
香るのはむせ返るような土の匂い、
感じるのは肌を撫でる冷たい空気。

主人公雛には母親しかいない。
その母親が病に伏せている今、雛は一人で山に分け入る。
勿論心細いが、それ以上に村の人を怖いと感じるから、彼女は一人で山菜や木の実を拾う。
その山の中、出会ったのは、真っ白な髪を持ち赤い瞳を向ける人ではない者だった。


ファンタジーとくくってしまうのはもったいないような作品。
とにかく情景の表現力の高さに感服!
山の稜線、頬を掠める葉、主人公が感じる耳鳴りや動悸すらも伝わってきます。
そして、一筋の光明を届ける最後。
まだ続きがあるのでは?
とendの文字を見ても期待してしまいます。

鬼と雛のその後を勝手に想像したくなる、そんなお話です。