志保とその取り巻きが、私の二つ前
の席、転校生の田中れいなを机ごと囲
んでいる。どうにか言ったらどうなの
よ、臭いんだよ、聞こえねーよ、お前
の存在意義そのものがわかんない、ど
っか行けよ、きもい、チビ、なんかム
カつくから謝れ、死んでくれない?田
中れいなはじっと俯いている。後ろか
らでは、それ以外は読み取れない。
「くだらな」
私がそう呟くと、志保は怯えたように
肩を震わせ、口ごもる。そのまま動か
ない。始業のチャイムが鳴り、救われ
た顔をしつつも舌を打ち、田中れいな
の机を苛立たしげに蹴り上げると、自
分の席についた。