人間は万能。
足元に咲いている小さな花だって、
蛇口をひねれば水にだって触れる。
目に見えない風だって、
手を広げれば簡単に触ることができる。
貴方の背だって、望めば簡単に触ることができる。
私たちは万能ね。
けれど、どうしても触れられないものがあるの。
捕まえたと思ったのに、
自分のこの手も、
この地球も、
すべてすり抜けて、
遠い場所へ行ってしまうものがある。
そんなものがあるのよ。
この想いもそんなものだったのかしら。
いいえ、捕まえられもしなかったの。
ただ、指をくわえて見ていただけ。
なんて臆病者なのかしら。
きっと自分もそれと同じ。
誰も捕まえてくれもしないちっぽけな存在で、
受け止めてくれる誰かの手も、
ましてやこの世界でさえ、するりとすり抜けてどこかへ行ってしまうのね。
そしてこの無限の宇宙の中で、
寂しい、
と一人呟くのね。