妄想ジャンキー ~進藤編~ 【完結】

作者梅谷 百

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人間は万能。


足元に咲いている小さな花だって、

蛇口をひねれば水にだって触れる。

目に見えない風だって、

手を広げれば簡単に触ることができる。

貴方の背だって、望めば簡単に触ることができる。


私たちは万能ね。


けれど、どうしても触れられないものがあるの。

捕まえたと思ったのに、

自分のこの手も、

この地球も、

すべてすり抜けて、

遠い場所へ行ってしまうものがある。


そんなものがあるのよ。


この想いもそんなものだったのかしら。

いいえ、捕まえられもしなかったの。


ただ、指をくわえて見ていただけ。


なんて臆病者なのかしら。



きっと自分もそれと同じ。



誰も捕まえてくれもしないちっぽけな存在で、

受け止めてくれる誰かの手も、

ましてやこの世界でさえ、するりとすり抜けてどこかへ行ってしまうのね。



そしてこの無限の宇宙の中で、



寂しい、



と一人呟くのね。