小さい頃にこの場所で出会ったあの子は、あたしのヒーローだった。
『きみ、つよいね。リクは、よわい子だから』
春の満開の桜も、夏の蝉時雨の暑さも、秋の木漏れ日の落ち葉も、冬の積雪の冷たさも、全部ぜんぶ通り過ぎても、もう、あの子に会えることは、なかった。
巡りくる季節の途中、また会えたと思ったのに、あたしのことは覚えていなかった。相変わらず人気者のヒーローは、やっぱり時々、寂しそうな目をしていた。心も体も弱い一人ぼっちな梨紅と、いつもみんなが集まってくる憧れの存在の一葉。
だけど、本当は──
『ぼくは、つよくなんてない』
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表紙イラスト:自作
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