大学入学時、ほかを衝撃的な出来事が襲う。初対面の同級生達が言葉をまねてからかってくる。道行く人もテレビまでもが自分の悪口を流し始めた。ほかは確信する。かつて自分をいじめていた人々がネットで情報を流しているのだと。ちぐはぐな言動を不審に思った家族に連れられ精神科を受診し、ほかは「統合失調症」と診断される。いじめられているというのは、病気が思わせていた妄想だったのだ。
「頑張れないのを病気のせいにしている」「統合失調症と明かすべきではない」。心ない言葉に触れほかは考える。100人に1人がかかるこの病気に目を背けるほうが、現実的ではないのではないか。この病気を通して透けて見える社会の欠陥があると。
強くあらねばと思ってきたほかに「ストレスには弱い」と指摘してくれたり、病気を身近なものとして扱ってくれた人々に支えられ、長い闘病生活を経たほかは気づく。心の病なんて厄介な特徴だけ持ち、秀でた面などないと思っていた自分が今、誰とも代わりたくない人生を生きていることを。逃げてもいい、環境を選んでもいい。これは社会に人間があわせるのではなく、人間にあわせた生き方を選ぶことを提案する闘病記エッセイである。
エッセイ
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