(あらすじ)東京から新幹線で片道一時間半から二時間程の距離に位置したド田舎の祖父母宅に、毎年恒例で訪れていた青井 遥祐(あおい ようすけ)は、今年も律儀にこの超ド田舎に足を運んでいた。そんな遥祐の帰省時の楽しみは、元家庭科の教師であった祖母の美味しい手料理ともう一つ……”真夜中の散歩”だった。中学生の頃、帰省中妹と喧嘩して家を飛び出した時に見つけた村でたった一つのボロいバス停。三人がけのベンチと申し訳程度に雨避けがあるだけの簡素なそのバス停のベンチからは、都会では見られない夜空が見られるのだ。遥祐は毎年夏のこのベンチに座ってゆっくり夜空を眺めるのが大好きだった。そして例に漏れずまた”その日”もいつものように深夜零時半過ぎ、誰にも内緒でそのバス停を訪れた。しかしそこにはだらしなく酔い潰れた先客が居て─……。
いつもと変わらぬ夏を過ごすはずだった遥祐の前に現れた、最近この村に越してきたという若い端正な顔立ちの青年。
青年にはある秘密があって都会から逃げてきた。
村の住人は愛想のない青年を煙たがるが……。
平凡な男子高校生が出会った彼は、夏の夜が似合う不思議な人だった─……。